第140話 提案!

3月ももうすぐ終わる春休み中盤、俺は愛莉先輩と俺カレへ来ていた。

ホワイトデーのお返し時に愛莉先輩に頼まれていたから。


愛莉先輩は部活時や普段は俺から距離を置いてくれる。

必要時だけ側に居てくれて、よく俺や部員たちを見てくれてオーバーワークや怪我の予防には徹底的に注意を払ってくれている。

名実ともに『バスケ部のお姉さん』として地位を確立して信頼される優しい頼れるお姉さん!


そのお姉さんが、カレー欲している!

ふたりの都合が良いその日、俺たちはまた俺カレへ向かう。


ランチのピークが終わる頃を見計らって入店。


景虎『へらっしゅー!!』


またあの癖つよあいさつ…?

店主の景虎さんには文化祭のハンバーガーショップでお世話になって居て顔馴染み。承が俺を見つけてにっこり笑ってやってくる。


承『いらっしゃいませ?』


愛莉『ませ♪』


愛莉先輩はにっこり笑って首を傾げて語尾を復唱する。

承は笑いながら、


承『こんにちは!また来てくれて嬉しいです!』


俺が黙ってニコニコしていると承がニヤニヤして、


承『宏介は二度同じ女の子連れて来るってことは?』


宏介『…先輩だよ、部活の。

尊敬しているし、信頼している先輩。』


承『…そうゆう事にしておくー!』


承め…冷やかして…!

テーブルでメニュー見るけど…この間の信くんセットは終わっちゃったか…?

※採算度外視の為、出産後奥さんが帰って来た時見つかって景虎さん正座させられて説教されました。


承『そうだね?定番もハズレ無いんだけど豆の入ったキーマカレーとか美味しいよ?』


愛莉先輩は迷っていて、美人は迷う姿も美しい。

承のオススメに揺らいでる。


愛莉『そんなのあるの?珍しいね…?どうしよう?』


『シェアします?』


愛莉『…本当は辛めのスタンダードで良いな?って思ってたんだけど…。

宏介くん辛いのは?』


『…人並みです。』


愛莉『…それは無理だね…。

私このカレー食べ比べセットで?辛口でさっきの豆のキーマカレーと白身魚のココナッツカレーください♪』


『…じゃ、ハンバーグカレー大盛り辛さ普通で。』


愛莉『日替わりカレーがすごく珍しいカレーなんだよ。

ここすごいよね?』


ぱっと見ファミレスなんだけど店主のこだわりが強いのを感じる。

量多いし、美味いし。


愛莉先輩とそんな事を話しているとまたあの子。紅緒さん、紅緒永遠さん。


紅緒『こんにちは!宏介くん!天堂さん!』


愛莉『愛莉で良いよー!』


紅緒『えー!愛莉さんでいいんです?じゃあ私も永遠で!』


この娘…本当に毎回必ず居るよね?

光沢のある黒髪を長く伸ばした色白のとんでもない美人。

承に告白して断られたのにめげずにアタックし続ける女の子。

…俺カレのヌシなんだって。ヌシ?

※本編参照


紅緒さんはニコニコしながら、俺も同じタイミングで言っちゃう。


紅緒『宏介くんは必ず女の子連れで俺カレに来るね?』

『…紅緒さんは必ず居るね?』


一瞬気まずい沈黙のあと、


『『…色々事情が…。』』


タイミング重なって三人で笑ってしまう。

紅緒さんと愛莉先輩は先日もだけど波長が合うのかずっと笑って話している。

お姉さんみたいな愛莉先輩を紅緒さんが慕っているような形みたい。


承『お待たせしました!邪魔するなよ?とわんこ?』


カレーが配膳されているなか紅緒さんは承に注意されていた。

犬っぽいから永遠とわ→とわんこなんだって。


結局食べてる時だけ自分のテーブルに戻っていた紅緒さんは食べ終わるころ自然にこっちのテーブルに移ってきていた。

愛莉先輩と俺と三人で結構話した。

東光高校と北翔高校の違いやバスケのこと。色々話題は尽きない。


そろそろお暇しようか?って頃に紅緒さんが突拍子も無いことを言い出す。

…そう言えば承が言ってた。

紅緒さんって世間知らずだけど行動力と独特の企画力を持っていて放っておくと巻き込まれるんだよって。



紅緒さんは目をキラキラさせながら俺と愛莉先輩に提案した!



紅緒『愛莉さん!宏介くん!

私!良いこと考えた!』


『…承が言ってた。

人間良いこと考えた!って時悪いこと考えているんだよって。』


紅緒『まあまあ、騙されたと思って?

この4人でダブルデートしようよ!

ね?おねがい!愛莉さん!宏介くん!私を助けると思って!』


紅緒さんは同情を買うように哀願する。

承に告白したけれども好きな子が居るってこの武将のような男の子は全然デレない。

ライバルは香椎玲奈!

綺麗だわ可愛いわ賢いわ!苦戦してるんです。

だからせめて女の子として意識して貰う為にダブルデートって形で?

堅物でお出かけせがんでも理由無いと絶対断られちゃうの!


愛莉『そんなに香椎さん?綺麗なの?』


『…そうですね、確かに。

そもそも承は小5で一目惚れみたいになってそれからずっと彼女に夢中です。』


愛莉『…彼女に夢中か…素敵だね。

永遠ちゃんほど綺麗でも上手くいかないんだね?…だ、だ、だ、ダブルデート…なんか恥ずかしいね?でも永遠ちゃん恋叶えてあげたい。』


愛莉先輩は乗り気みたい。


『…じゃ、予定詰めます?』


愛莉『お願い!私は承くんに申し出るよ!』


こうして、承に愛莉先輩が『ダブルデートしようよ、承くん!』って申し出た事により承と紅緒さん、俺と愛莉先輩のダブルデートが計画された。


紅緒『ありがとう!そっちもフォローするね!』


俺と愛莉先輩は顔を見合わせた。

愛莉先輩は少し赤くなりながらモジモジして、


愛莉『…こ、困ったなぁ…ダブルデートって言われちゃうと…?』


自分でダブルデートしようよ!って承に言ったのに愛莉先輩は困ったなって様子をしながらもるんるんで女の子って難しいって思った。

…デート?…リハビリ?愛莉先輩は魅力的すぎるから悪寒がする。

でも俺もいつまでもこのままって訳には…。

各自の思惑が入り混じり、ダブルデート計画進行開始!

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