第135話 何をする?

永瀬『…制服姿でナンパしてたら北翔の印象悪くなっちゃうでしょ?

それは止めて?』


九頭『あっはい。』


割って入るも何も永瀬さんは九頭を説教し出していた。

九頭が永瀬さんに話しかけているのはよく見るのだが…?

結構口調が強い。

ちなみに承は話を聞いてるとすぐナンパに遭遇するし、すると必ず止めに入る。

…主人公属性持ちなんだよな。


九頭『な、永瀬さん?いつもと?

もうちょっと優しくない?』


永瀬さんは俺の目をチラッと見て、


永瀬『今は生徒会の書記でもあるし、そろそろうちも入試の時期だし悪い評判は絶対ダメ!

そもそもナンパする男の人きらい!』


九頭はショックを受けてる。

…でもこいつ友永さんと…?


九頭『だって!あれは!

…僕は!やっぱり永瀬さんが1番好きなんだ!…!』


こいつ…!彼女居て?飽き足らずナンパしてたくせに永瀬さんが好き?

呆れて声も出ない。


永瀬さんも同じようで、


永瀬『今日は帰ってくれないかな?

今日は宏介くんにホワイトデーお返し買って貰うんだー♪』


ニコニコ永瀬さんに呆然九頭。

九頭はやっと俺の方を向いて、


九頭『永瀬さんにチョコ貰ったのか?』


『…貰った。』


九頭『…は?

誤解させるから義理は贈らないって宣言してたんだぞ?』


『…そう言わなきゃお前みたいなのが寄って来るからだろ?』


九頭『斉藤くん?永瀬さんに馴れ馴れしく…!』


俺に食ってかかる九頭を止めて永瀬さんが諭す。


永瀬『…そもそも?九頭くんには友永さんが居るでしょ?

ミス北翔の…いやミス一年の可愛い彼女。』


九頭は顔を曇らせ、


『あんなになるなんて思わなかった…まさかリバウンドが…。

なんで?俺!』


永瀬さんは付き合って居られないよ!ってバッサリ。


永瀬『今日は!デートだから!邪魔しないで!

ナンパはとにかくやめてね!生徒会に議題出すよ?公共の場で異性に無理に声かけ案件って?』


…デートじゃ無い…口には出せない。


九頭『そんな!折角決まった進級が!色々困るよ!永瀬さん!』


九頭は永瀬さんに縋りつきそうな雰囲気。

永瀬さんは真面目な顔で、


永瀬『だったら帰って。ナンパなんかしないでまっすぐ家へ。

二年生になれるんでしょ?』


九頭はこくこく頷いてすごい速さで帰って行った…。

永瀬さんは呆れ顔でぼやく。


永瀬『私にしつこく言い寄って来る男の子ってさ?

なんか変な人多いんだぁ。

…生徒会の権限使って嫌な女だって思った?』


心配そうに聞くけど俺は否定する。


『…いや。

生徒会の一員として見逃せない事もあるだろうし?

学校の評判、生徒の指導、知人として?むしろ注意すべき点しか無い。』


永瀬『良かったー!わかってくれて。

…私がモテるなんてやっかむ娘がね?


「永瀬さんに言い寄る男の人って見た目は良いけど薄っぺらい変な男多いね?」


って言うの。

あー。薄っぺらくない中身のある男の人が言い寄ってくれないかなー?』


チラッ、チラチラ。


あ、俺無理。

女の子怖い。


俺はスルーを決めるけど、永瀬さんはふふ!って笑って、


永瀬『今は良いよ。

でも、女の子は皆んな『そんな娘』ばかりじゃ無いよ?

それがわかったら…ね?』


きっと九頭や山本や差堀はこの顔にやられたんじゃない?

って思いほどの極上の笑顔で永瀬綾は明るく、綺麗に可愛く微笑む。

承、赤くなる女の子も素敵だけどやっぱり女の子は笑顔じゃない?


でも笑顔のあとダークサイドに堕ちた笑顔で、


『彼女が居てナンパする男。

私を好きって公言してメガネかけて帽子してるだけで私がわからないかなぁ?

しかも、彼女キープしたまま私が好き!って…。

そんなのに言い寄られてるだけでもストレスなのに…言い寄る男の子の質で女子からディスられる私って…。』


そうぼやく永瀬さんは国民的日曜日夕方アニメちび⚪︎子ちゃんの表現で顔に縦線が入りそうな表情で美人台無しだった。


☆ ☆ ☆

こんな状態の女の子を元気にするには?

簡単だよね、ひたすら楽しませること。


駅ビル中のレディースのお店を嫌な顔せずに完璧に付き合う。

絶対に手を抜かず、キチンと褒める。適当でなくコメントも同じことを言わずに自分の好みも伝える。

その上で褒める。部分も褒めるし、雰囲気も褒める。

あれ?ってとこは指摘する。


何店か周り、永瀬さんはブラウスと春物のアウターを購入した。

それも黙って持つ。

ダークなんたらフラペチーノを購入して、散歩がてらゲームコーナーで遊ぶ。

うちはゲーム一家でゲームにはうるさい。

でも永瀬さんはそんなしないはずだから、クレーンゲームで小さいぬいぐるみとお菓子をごっそり落としたり。

黒い雷が大漁だったんだけど…康司のホワイトデーのお返しで二宮さん…俺が言うことじゃないか。



そして、勿論俺がお金出して銃でゾンビ撃ちまくるゲームをふたりで始める。

永瀬さんは少し困惑した表情で、


永瀬『…私こういうのあんまりやらないから勝手が…よくわかんない…?』


『…良いの。適当で。

頭空っぽにして?アホみたいにゾンビ来るから?銃をぶっ放して?』


前に少しゾンビもの海外ドラマ見てたとか話してた気がする。

ほら、始まるよ?


永瀬『え?え?

きゃー!きゃー!!』


バババ!銃を撃ちまくる。

視界に入るなり撃ち倒されるゾンビ。

永瀬さんはきゃー!きゃー!言いながら下手っぴな手付きでゾンビを一生懸命に撃っている。


段々効率良くやれるようになるんだけどその頃にはステージ進んで敵も強くなっているわけで。

硬貨を数枚入れておく。


俺は危ない周辺を徹底してケアする。

真ん中の簡単な敵は永瀬さんが気持ちよく掃討していく!


永瀬『あ!…終わっちゃった…。』


『ボタン押して?まだ出来るみたいだよ。』


永瀬『!!

本当だ!すぐ助けるね!宏介くん!』


ゲームオーバーになったけどあらかじめ入れたコインでコンテニューさせる。

すぐ終わると味気ないもんね。

しばらくやってラスト直前あたりで切り上げる。

…ここから先はマニアックな人用の鬼畜ステージだからね。


永瀬『あー!もう少しだったね!

あそこで上手く倒せたらね?あー!もうちょっとだったなぁ…!』


興奮冷めやらない永瀬さんが可愛く見えてちょっと寒気する。

…でもさっきのナンパのイライラやストレスを忘れた表情は見てて気持ちいい。


でも永瀬さんは首を傾げて、


永瀬『…なんか宏介くんが女の子扱い慣れててモヤっとする。女の子の洋服の買い物に付き合うことよくあるの?』


『…とんでもない。ここ一年では今回だけ。』


永瀬さんはやった!って後しまった!って顔になり、


永瀬『ごめん、傷口えぐった。』


『…過ぎたこと。』


永瀬『ごめん!

今日は楽しいな。何をするかも大事だけど結局誰とするか?なんだよねー♪』



水っぽくなったドリンクを飲み干して今日のメインイベントのバレンタインのお返しを買いに行くことになった。

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