第132話 進級か否か【side友永ゆかり】

 3/14ホワイトデー。

 私は九頭くんにしかチョコはあげていない。

 …そして皐月からチョコ貰ってる。


 …私は今日、担任に登校するように連絡を受けた。

 脅す訳じゃ無いけど,職員会議が終わり進級か否かは口頭で担任教師から通告されるとのこと。

 それだけ成績に厳しい学校なんだよね。

 …それを色んなことにかまけてて私はおざなりにしちゃって…。

 一言で言うなら恋にかまけてて全てを疎かにしたの。


 一度は見違えるほど綺麗になってミス北翔にまで登りつめた。

 …でも、レギュレーションの問題からミス一年に格下げになり、停学食らったら人気は地に落ちたよ。

 でも自業自得だよね、私の長年の片思い相手九頭達雄くんに言い寄られて、舞い上がってダイエットを公私ともに支えてくれた宏介くんを裏切って私は九頭くんを手に入れた。

 …でも、もう九頭くんは私に興味がない。

 一時、目を逸らして過食に逃げていた。


 でも、もう気づいてしまった。

 気づいた以上、目を逸らしてはいけないよ…。


 とりあえず、家族に迷惑かけないように進級を目標に皐月と頑張ってきた。

 それでも足りずに小佐田さんに頭を下げて、勉強会に入れてもらい北翔入学以降最高成績ではあった。


 …これから、担任の先生と面談があって進級の可否が通告される。

 祈るような気持ちで玄関の入り、学年変わるからシューズボックスは撤収している為、内履きを持参している。


 …この内履きは2年生のシューズボックスに入れるのだろうか?

 私は申し訳ない気持ちで内履きを履く。


 11:20私が指定された時間。

 うちの担任は化学教師だから化学準備室へ向かう。

 皐月は11:45頃来るように言われたって。


 …夏休みもそうだけど長期休暇でも部活や委員会で登校している生徒は以外と多い。強いて言うなら三年生が卒業し分だけ人の気配が少ない。


 私、進級出来るのかな?

 やはりそれが懸念。成績的には皐月よりちょっと良いし、1学期は赤点無い。

 でも、不純異性交友で停学喰らっている。

 マイナスだよね。

 九頭くんも多分同条件。

 九頭くんは11:00から面談って言ってたけど…どうなっただろうか?

 音沙汰は無いけども私は私で一杯一杯。

 進級の為にここ最近は全てをかけていた。

 いよいよ、化学準備室へ着いた。



 私なんであんなに考えるの放棄してたんだろ?


 何をしてても思い出す。

 今の俯瞰で見れる自分も自分だし、九頭くんに溺れて宏介くんを裏切ったのも自分、以前の卑屈で流されやすい自分も自分。


 それでも考えるのを放棄しちゃいけなかったよね。


 コンコン、ノックする。

 中から入室を促す声がする。


 私は深呼吸して入室する。



 ☆ ☆ ☆


 担任『良かったな友永、二年生になったらもう油断するなよ?』


 化学教師の担任は中年男性、白衣を着て人の良い笑顔で私に笑いかける。


『ちょっと何言ってるかわからない?』


 …宏介くんの口癖だね…。

 こう言う時に出るんだね。


 担任『進級おめでとう友永。

 友永は1学期真面目な目立たない生徒で2学期に急に痩せて美人なって?ちょっとおかしくなったけど…3学期は持ち直したな?』


 先生の所見が語られる。

 私の事、目立たない私をそんなに見てくれていたんだ…?


 担任『まあ、色々失敗もあったんだろうけど?

 3学期の友永見てると途中で気付いたんだろ?何か大事な事に?』


 私の中に、二つの言葉が浮かび上がるよ、


 小佐田『届かないかもだけど、

【健気に謙虚に】

 それがあんたの助かる道だよ?』

 78話 なんでかな?参照。


 そしてもうひとつ、


 宏介『…見てろ?友永さんは素敵な女性だ。

 絶対綺麗になるから黙って見てろ…。』

 16話 笑う者、笑われる者参照。


 宏介くんは私のファーストキスの相手。

 あんな裏切り方してとても顔なんて合わせられない…。

 でもね、ブクブクリバウンドして太っていく私の底にずっと沈んでいた言葉。

 …九頭くんとの思い出って…えっちぃ事した前後のラブラブな思い出だけ。

 宏介くんとは夏から秋にかけて笑って泣いてキュンとしてその頃の思い出ばかり思い出す。


 私はクズだ。

 でも、そんな時私を肯定してくれた宏介くんの言葉がこんな時でも私を支えてくれる…償いようも無いけど私は…。


 それでも、それでも進級さえすれば同じ学年で一緒の時を過ごせる。

 視界に入らなくっても、無視されようとも、同じ学校で過ごせる。


 私は進級出来た安堵と、皐月との努力の日々と、あの熱い夏から秋を思い出して涙が止まらない。


 先生は慌てて声かけてくれるけど先生のせいじゃないよ。

 私は謝って、化学準備室を退出する。


 喜びより安堵。

 自分の感情が制御できなくってまだ涙目のまま自販機で何か飲もうって思ってフラフラ自販機コーナーへ向かう。



 …。


 …。



 あ。


 永瀬…綾さん。


 向こうから歩いて来るのは永瀬さん。

 永瀬さんは学年1番の美人さんって評判すらある超絶美少女。

 女子バスケ部で登校かな?まだ練習着のまま。

 …彼女は私を嫌ってる、宏介くんを裏切った私を。



 廊下の端を歩く私は体を固くしてすれ違う、毎回冷たい目で見られるから。

 1番再接近時に永瀬さんが口を開く、



 永瀬『…売女まだ学校に居るの?』


 私は卑屈に言う、


『はは…進級出来たので…?』


 永瀬『…そうなんだ。

 …宏介くんは優しいから酷い事言わないけどね。


 …あっちの売女もそうだけど彼氏居るならそっちだけ見て暮らして?』


『…はい。』


 永瀬綾さんは珍しく視線を合わせて、



 永瀬『今日はこれから宏介くんとお出かけなんだ♪ホワイトデーのお返しで♪』


 そう言い、嬉しそうに出ていった。


 羨ましいな…。

 いや、そんな事思う資格無いよね…。


 私の彼氏の九頭くんから、


 九頭『留年回避!無事二年生に進級!』


 ってロイン来てた。

 きっと彼は私の進級の事なんて興味無いだろうし、ホワイトデーなんて思い出しもしないんだろうね。


 私には何も言う資格なんて無いよ。



『…皐月どうなったかなぁ?』


 私はひとり呟いた。














 ☆ ☆ ☆


 俯瞰で見れるようになった友永ゆかりが最初に見えたのは自分のしでかした事でした。

 進級がかかっているのでいつもより緊張感出そうって固いゆかりを書いていると以前との落差に驚きビビる。ゆるい頃を確認すると引っ張られるので俯瞰後だけ確認して書いているんだけどプロット通りに書いているのに、先日までのゆかりと高低差ありすぎて耳がキーンって鳴りそうなある(笑)

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