第130話 やらかし

元キャプテン『え?病院寄ってから来たの?なに?どこ?

どこ悪いの?』


それでも仲間。

大多数は心配そうで。

俺も毒舌的な事言いそうになった、さすが口に出さない。

…もし本当に怪我や病気だったら後味悪すぎる…。


差堀『…そんなことより…、

今日皆んなと会っておきたいじゃないか?』


キメ顔やはり違和感しかない。


三年『…お前浪人だし、家も比較的近いし割と来れそう?

お前愛莉マネに会いにまた来るだろ?』


一年や二年生は嫌な顔をする。

…コイツ引退してからの方がちゃんと来てる印象すらある。

でも、



『また来れるし、来るさ。

…でもお互い高校生として会えるのは…今だけ。

俺は…。』


貯めるなぁ。

整った顔立ちに跳躍力と上背、センス。俺らの欲しいモノとそれ以外の部分の欲しくないモノをたくさん持っている差堀先輩。


ちょっとキメに来てるのがわかる。

キャプテンなんかも察して少し嫌な顔してる。


差堀『…信じてもらえないのは俺の不徳の致す所。

仕方ないよ。でも、俺はバスケを、バスケ部を愛してる…。』


キャプテンがそばに来て耳打ちする。


キャプテン『差堀先輩さぁ、最近意識高い系の女子大生グループと一緒に居る事が多いらしいんよ?』


『はぁ、だからなんかこないだからどっかで聞いたような耳触りの良い言葉を?』


キャプテン『年末ごろはコミットとかマインドとかセルフプランディングとか言ってたもん。またどうせ口だけだろ。

…でも、また天堂マネージャーが絆されないか心配…。』


皆んなの中心で、差堀は悲痛な表情でバスケや部員への愛を語る。

皆んなの前で差堀先輩拒否した愛莉先輩もちょっと話しを聞く姿勢。


差堀『…くっ!それでも、俺はこの時間を…皆と…皆と過ごしたい!』


三年『…でさ?結局病院は怪我?病気?なんか症状あったんだろ?』


差堀『…くっ…!それでも、今、この瞬間ときを…。』


悲劇の英雄ぶってる差堀先輩。

俺は冷めながらも具体的症状を言わないから?

どうせ大した事ないか?なんか違うモノじゃ無い?って思う。

それでもみんな差堀先輩に同情的で心配している。

さながら差堀劇場、差堀の一挙一投足をみんな見て聞いている。


…愛莉先輩!超心配そうな顔してる!

あの人は人を悪い風に見ないから!ヤバいでしょ!


キャプテン『宏介、アシスト。』


『…うす。』


キャプテンが差堀に仕掛けた。

…最後位と思ったけどもう先輩って付けたくない。


キャプテン『どんな症状なんすか?痛み?違和感?』


差堀『それは…一言じゃ?強いて言うなら違和感…かな?

それでも俺は…!』


はいはい。


キャプテン『でも心配っすよ。今日のプレーで痛めて無いかとか?病気なら影響は?とか。

薬とか出て無いんすか?』


差堀『薬は出たよ?』


キャプテン『ほほう?どんな?先輩が心配っす。』


差堀『ありがとう、みんなを心配させたく無い…!

愛してる愛莉や大好きなみんなを…!』


愛莉『…先輩…。』


愛莉先輩は差堀を心配している。

愛莉先輩は優しすぎて差堀を切れないし、こう言う人の情にすがるのが差堀は得意…天敵と言っても言い組み合わせだと思う。

優しいデキる女がダメ男と切れないって世界の縮図を見ているよう。

…せっかく愛莉先輩が頑張って差堀を拒否しているのにこんな事で絆されてたらこの先どんな悪い男に捕まるか?愛莉先輩には誠実で一途な男が相応しいと後輩ながら思うんだ。



キャプテン『…どんな薬出たんすか?心配。』


キャプテンは心配を連呼しつつ、具体的な症状や病名?怪我?を聞き出そうとしている。

差堀はぼかしてみんなに心配して欲しいから変な回避ムーブ。


三年『本当だ、薬入ってら?』


三年の先輩が勝手に差堀のショルダーバックを開けて、薬を取り出す。

同学年ならではの気やすさで。

差堀は勝手に開けるな!って言い取り返そうと手を伸ばす。


三年『へい!』


三年がキャプテンに薬を回す、

キャプテンに差堀が現役時代にも見せない早く的確なチェックでディフェンスに入る。それ!試合でしろよ!


キャプテンは愛莉先輩に薬をパスしようとすると差堀が気合いの入ったディフェンス!

ここでキャプテンからのアイコンタクト!

俺はすぐにわかった。

スマホの検索を起動して、待つとすぐにノールックパスで薬の紙袋が来た!

すぐに薬の名前を打ち込んで検索にかける。








『…クラミジア感染症っすね。』

※性病の一種、様々な症状が出るよ。


シーンとする差堀劇場。

差堀はバレた!って顔になった。

よく性病の通院であそこまで悲痛な芝居が…演劇部の方が良かったのでは?



一年マネ『先輩、近づかないで!』

二年マネ『…ありえない。不潔!』

三年マネ『…愛莉ちゃん!近づくと感染うつるから!絶対ヨリ戻しちゃダメ!』


キャプテンも俺も康司もうんうん頷く。


愛莉先輩はあの優しい表情が一転、凍りついた表情になったあと、涙目でぷんすこしながら、



愛莉『…また人の心を弄んで…。

…最低です…!』



差堀『…え?俺またなんかやらかしちゃいました?』


一斉に集中砲火で非難を浴びる差堀。

そこまでして注目浴びたいのか!目立ちたがり!とか罵られた差堀は開き直って、



差堀『ガイアが俺にもっと輝けと囁いている…!』


とか言って、主に女子マネージャーたちから非難轟々浴びて、さっきまでのみんなの心配は裏返り、自分で黒歴史をまた塗り替えた妖精は気付くと消えていた。


…それ現役時代に出来たらマーク外せて俺らもっと勝てたのに…。

元キャプテンの嘆きで部活の追い出し会は終わりを告げた。

先輩たち、お疲れ様でした。


…差堀利伸は最後まで差堀利伸だった…。

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