第129話 差堀無双
ピピー!タイムアウト三年生!
やいのやいの揉み合う三年生チーム。
俺たちも給水しながら話し合う。
差堀先輩アレだけど得点力のあるフォワードで、確かに天才型ではある。
スタミナ致命的に足りないけど…皆んな疲れてる連戦の2戦目となると話は別。
脅威でしかない。
康司『なんで先輩遅れてきたんだろ?』
『…さあ?でもどうせ変な理由か意味分からないこと言い出すよ?
きっと俺たちの想像の斜め下。』
康司『…でもあの得点力は脅威だし?今更差堀先輩にドヤ顔されたくねぇ!』
俺は頷く、挑発に弱いお人だから…そこ攻める?
どっ!!
三年生チームが盛り上がってる。
三年『監督!差堀!遅れてきた理由、バテるから基礎練習したく無かったそうでーす!』
三年『なんなら、ウォーミングアップでバテるから、遅れて来たそうです!』
三年マネ『スタミナ無いから2試合不可能だから2戦目だけ出るつもりだったの?!』
なんて最低な理由…。
差堀『俺が活躍する展開しかやりたくねえ!俺無双したい!』
俺たち一年も俄然燃えてくる。
こんな事言われたら絶対負けたく無い!
そうだろ?
一年『俺、差堀先輩に密着マーク仕掛けてスタミナ削る!全部は止められないけど限界まで喰らいついて泥々の泥試合に持ち込んでやる!』
方針は決まった!
ゲーム再開!
あれ?スタミナ温存差堀先輩?
差堀先輩の動きが硬く、鈍い…。
三年のチームメイトが駆け寄る。
うんうん、頷く、
三年『差堀アップしてないって。』
あほ?あほの子なの?
アップも済ませないで急に試合に入って動ける訳ないし、怪我の可能性すらある。
さすがに腹が立って、
『…先輩、一年だからって舐めてるんすか?』
差堀先輩は真面目な顔で、
差堀『…スタミナを節約し過ぎただけだ…!
俺は下手するとウォームアップでバテる可能性がある…!』
無駄に男前顔で差堀先輩は言い切った。
マジで?
先輩は交代させられ、コートの端っこでアップ始めたんだけど…
ほんとにアップにアップアップしてる感…。
これが去年の夏の大会うちのエースだった男…!
第一Qが終わり、僅差で三年優勢。
お互い二試合目だけど連戦の一年チームが不利か。
色々擦り合わせて、第二Qが始まる。
いよいよ差堀が出て来る…!
俺たちは彼のバカさ加減やアホな言動の印象が強すぎて忘れがちだった。
…確かに差堀先輩は天才型だった。
消耗戦に持ち込むって言った彼がまったく押さえられないほどの敏捷性と跳躍力。打点の高いシュートフォーム。
差堀に回すとかなりの確率で得点につながる…!
舐めてた?前から思ってたけど、
味方だといざって時頼りないけど敵だと厄介な男だよね?
差堀ひとりで15点入れた第二Q。
でも、もう膝が笑ってるのが見える。
『サンキュ、次から俺抑えるよ。』
康司『…宏介が?大丈夫?』
『最近肉体改造でスタミナと守備のフットワークは重点的にやった。』
第三Q開始!
差堀『宏介か!お前で俺は止められない!』
『…俺が止めなくても止まるでしょ?』
事実、もう差堀先輩はスタミナ不足で精彩を欠いた。
俺がドリブルで突っかけて対応せずに見てるだけ。
見てるだけだからフリーになって点は簡単に決まる。
差堀『俺!もうだめ!メンバーチェンジ!』
差堀は自分から退いていった。
…え?良いの?それで?
差堀『俺はお前らに負けてねぇ!俺は自分に負けただけ!
俺を抑えられなかっただろー!』
試合は一年チームが勝利!
でもなんだ?この負けた感!
差堀先輩に勝ち逃げされた気分…!
試合が終わり、先輩達との語らいの時間。
出場機会の無かった部員たちが学年入り混じり試合を続けている。
元キャプテンたちの抱負や夢、俺たちの目標や目指すプレイスタイルなどを試合見ながら語り合う。
差堀『俺は!一浪して!良い大学目指す!
そして!スーパーカーとか乗り回す!でっかい男になる!』
あははは!
皆んな笑う。
でも、差堀先輩は、無邪気に自分の夢を信じてる…。
これって凄くない?一浪して絶望的な状況なはずなのに夢を語り、自分を信じる。
おバカだけど強いメンタルを持っている。
ここだけはすごいって思う。
差堀『…俺はみんなに言ってる訳じゃ無い。わかる奴だけ俺の言葉が届いて欲しい。俺を見て、聞いて感動して欲しいんだ!』
真面目な差堀先輩は男前に見える…多分見えるだけだとは思うんだ。
…たぶん。
差堀『だってそうだろ?感動ってさ?感んじて動くってことだろ?』
なんか差堀先輩らしからぬ…良い事っぽい?
…でも違和感あるよね。そんな意味もある事言わぬはず。
差堀『夢に!具体性を!
例えば、さっきの!スーパーカー!』
決めにかかってきた!
差堀先輩の1番自信ある斜め45°の角度でドヤ顔で、
差堀『俺が目指すの黒い!フェアーリ!』
ざわざわ、
『フェアーリ?
『黒いフェアーリ?』
『フェアリー?妖精?』
黒い妖精?
差堀『黒い妖精?なんか格好良い?』
誰かが言った、
『黒いってより黒歴史だろ?
なんの妖精か?黒歴史の妖精だろ!』
ドッ!!!
バスケ部大爆笑!
バスケ部公認、黒歴史の妖精差堀利伸誕生!
バスケ部に新たな歴史が刻まれた!
三年『まったく、遅刻して来るから皆んなにいじられるんだぜ?』
差堀『…実は病院に寄って来て…本当は今日来るか迷ったんだ。
…でも、皆の顔は見ときたいだろう…?』
どこか悪いのか?
(…あたまじゃないか?)
さすがに口には出せなかった。
意味分からないけどバスケ部で差堀は良い意味でも悪い意味でも無双している。
☆ ☆ ☆
あるの中の差堀が主張し続けているw
まだやらかしたいとw
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