第128話 卒業式
そして、卒業式。
今日は登校する最終日。
…ホワイトデーのお返しを俺は早めに来て、チョコくれた人たちにありがとう、お気遣い無くって手紙を同封してお返しをそれぞれの机に忍ばせた。
…不義理かもしれないけど俺、女の子苦手で面と向かって話したり、これを機にアプローチされるのホント無理…申し訳ないけどこれで許して欲しい。
永瀬さんとか愛莉先輩、望は春休みに会うだろうから手渡しで…。
さて、そろそろ卒業式が始まる。
三年生に面識あるのはバスケ部の先輩位のもの。
生徒会書記の永瀬さんは忙しそうに動き回っている。
特別在校生側はする事も無いが生徒会の一員である永瀬さんは一ノ瀬会長の送辞や生徒会からの諸々の準備で忙しい。
卒業式が始まった。式は粛々とすすむ。
ムードのある曲が流れ、開会、卒業生入場,国家斉唱、校歌斉唱、校長や来賓が挨拶して卒業証書授与。
卒業式独特のムードが流れるなか、どうこう言う時って知ってる顔に目がいく。…いや行ってしまう。
知らない生徒が95パー以上の三年生たちの中で知ってるバスケ部の先輩の顔は意外とすぐにわかる。
…緊張している者、悲しい顔をしている者、嬉しそうな者、三年生の女子マネはもう泣きそう…。
あの先輩感激屋だったもんなぁって思ってると。
…ご存知!差堀先輩…。
差堀先輩、なんかもう泣いてる…。
女子とかの誰か泣き出して連鎖反応はわかるけど…もう?ここ?
いや、人それぞれだし、何に感激したり感動するかは人の自由。
…あ、違う、卒業式に泣いちゃう俺!に酔ってる…?
差堀先輩の酔いっぷりは滑稽を通りすぎてなんか悲劇の英雄みたいな顔して卒業証書を受け取り、退出して行った。
…なんか壇上から語りかけたり、伝説作らなくってよかった…。
そして送辞、答辞、卒業の歌斉唱、閉会、卒業生退場と式はつつがなく終わる。
卒業式が終わり、HRで担任の話を終えた俺たちはこれで今年度のカリキュラムを終えた。
3月上旬、これで春休み!
後は恒例らしい部活の追い出し会。
うちは卒業式翌日に卒業生を送る会がある。
…こないだ差堀先輩は物理的に追い出し会したけど…絶対来るんだろうな?
永瀬さんに春休みのお出かけの確認をしてその日は終わった。
☆ ☆ ☆
バスケ部追い出し会。
翌日。
昨日の式典感は微塵もなく、体育館はいつも通り。
俺たちはもちろん部活の格好。
そして久しぶりに見る、三年生の部活の姿。
『…差堀先輩居ない?』
康司『まさか?あの差堀先輩が…?ほんとだ?』
ざわ…ざわ…
元キャプテン『…差堀居ないけど…始めよう?』
キャプテン『うっす!』
俺たちは色々考察する。
『…やっぱ浪人って言いにくいんじゃ?』
『忘れてんじゃね?』
『女の子と約束?』
『こないだの追い出し会で懲りた?』
『指定校推薦取り消しは醜聞でしょ?』
康司『宏介はどう思う?』
俺は少し考えて、
『きっともっと下らない理由じゃ無い?』
康司『言えてる(笑)』
とにかく、久しぶりに三年生と一緒にウォーミングアップを初めて、そのまま基礎練習へ移行する。
三年生は口々に、
『俺らの代よりキツくね?』
『受験でナマりすぎだ!』
『ひょー!久しぶりすぎてたのしい!』
汗かいて、動いて寒かった館内はじきに熱くなる。
基礎練習終えて、軽いオフェンス練習を終えて、今日はこれで残りは試合!試合尽くし!
三年は感覚の差異に驚き、スタミナの無さを嘆く。
俺たち1、2年はそれを大笑いしながら見ている。
三年対二年、一年対二年、一年対三年の三戦行い、希望者はその後力尽きるまで自由に試合する形式。
まず二年生対三年生。
やっぱり現役の二年生が押してるけど三年生は上背があって速攻を得意としている。意外にもスコアはほとんど差が無く二年生の辛勝だった。
次は一年生対二年生
俺とキャプテンのゲームメイクがぶつかる。
愛莉『いつも通り、セオリーに宏介くんらしくどこか外して攻めればいいよ。』
愛莉先輩はあっちじゃ?
愛莉『あーれー。』
キャプテン『愛莉マネはこっちチームだろ?』
愛莉先輩は二年生チームに連れて行かれた(笑)
チーム分け忘れてたのかな?微笑ましい。
一年マネ『…えーとお姉ちゃんが言った通りで?
宏介くんのゲームメイクに軸は康司くんで攻めるかんじ?
でも二年生もそれがわかってるはずだから?宏介くん捻って!』
『…うん。』
お姉ちゃんが愛莉先輩の公称になりつつある。
二年生はキャプテンがゲームメイクしながらも積極的にシュート力を活かし攻める布陣。
一年生は俺がボールを運んで康司で攻めつつも、俺もシュートしながらボールを散らす作戦。
二年生は連戦で不利な組み合わせ、それでも先輩の意地でスコアはやや二年生が押してる。
試合が傾いたのが後半で、控えのレベル差が直結した。
疲労が見えるメンバーを交代するとみるみる差がつく。
ここで、試してみよう!
愛莉先輩のメニューで培った、俺のドリブルとシュートで局面を打開する…ように見えて俺を囮に周りを活かすゲームメイク。
俺はフェイント、ドライブ、必殺のストップを駆使して俺のドリブルを強く印象付けた所からのノールックの超速パス!
康司は俺の練習に付き合って俺のパス取れる!
これで少し点差は縮むけど…さすが二年生。
それに最後は対応してくる、対応するなら囮では無く個人技で点を取りに行く!俺にマーク寄ればまた散らす!それでも二年生に完敗。
試合後インターバル。
愛莉『ごめん、キャプテンたちに宏介くんの囮作戦教えたよ。』
なんで?って思ったけど別に同じチームだし、きっと愛莉先輩なら理由があるはず。
愛莉『今後敵チームも囮見て引っ掛からなくなる、その時は宏介くんが点を取ることでまた囮になれる。宏介くんが点取れるなら周りが囮だしね?
試合してれば相手も対応してくる、それを考えるのに良いって思ったの。』
愛莉先輩は申し訳無さそうに言うけどさ?言うこともっとも!
絶対対応されるんだし対応された時の動き見るのに最適!
まだまだ練習が必要な戦術ですよね。
インターバル後はVS三年生!
一年生は連戦!三年生は1試合分休めているし、1試合して試合勘戻ってきてるはず!良い勝負じゃ無い?
ジャンプボールから試合が始まる…!
バン!体育館の扉が乱暴に開かれる!
…うわぁ、差堀先輩?
差堀先輩は長袖ジャージの上を羽織っていたけどそれを芝居かかった仕草で脱ぎ捨て、髪を掻き上げながらコートに入る…!
差堀『待たせたな?主役は遅れてやって来る…!』
ぴぴー!
監督『三年生チームファウル!一年生チームツースロー。
タイムアウト以外で六人目がコートに侵入!差堀手を上げろ!』
『うわぁ…最低な反則だ…。』
差堀『…解せない。』
愛莉先輩が頭を抱えている。
…黒歴史の妖精と呼ばれる男の高校生時代最後のゲームが始まった…!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます