第125話 追い出し会

※追い出し会…部活などで先輩を送り出す会。一般的には感謝や激励を後輩から先輩に伝える会。


☆ ☆ ☆

差堀『愛莉!今日こそ!良い返事聞かせてくれよ!』


先輩は卒業こそ決まったものの、不祥事で大学の指定校推薦は取り消し。

記念受験程度の認識で臨んだセンター入試散々な結果だった為、遂に卒業後進路なしとなり、浪人が決定した…。


キャプテンが顔を顰めながら、


キャプテン『ああやって、天堂マネの気を引いてずっとすがってるらしいぜ。

…だっせえ。マネージャーはいい娘で先輩に同情があるから冷たく出来ないのわかってて…。』


はあ。愛莉先輩には世話になってる。

愛莉先輩はいつも一生懸命で、バスケ部の事を1番に考えて行動してくれて、俺のトレーニングをいつも見てくれて独学で色んな事を学んでそれを惜しみなく俺たちに使ってくれる。

こう言う時しか返せない。


差堀が大袈裟な身振り手振りで話しかけるのを愛莉先輩は困った顔で聞いてる。

…もちろん愛莉先輩が差堀とより戻すなら戻せばいいし、知った事じゃない。

でも、もし嫌がってるなら…。


差堀『俺浪人になるんだ…でも俺は悲観して無い!』


愛莉『…大変だとは思いますけど…。』


差堀『俺ってマイノリティじゃん?

だから、俺の流れを作って!浪人から成り上がる!

そう、流浪人るろうに!』


『剣心に詫びろ。』


差堀に突っ込んでもしょうがないんだけど…思わず突っ込んじゃう。

差堀と話すと感覚が狂うから嫌なんだよ…。

まじで望の屑竜閃喰らえば良いのに…!


差堀『…宏介、彼氏と彼女の話しだから部外者はすっこんでろ。』


『…今は部活の時間なんで。部外者は先輩の方ですよ。

…あと愛莉先輩は差堀先輩と別れたって聞きましたが?』


愛莉『…うん!別れた!宏介くん別れてるよ!』


愛莉先輩は俺の後ろに逃げ込む。

俺は一歩前に出る。

自分を避ける愛莉先輩に差堀はまだごねる。


差堀『愛莉!俺は認めてない!』


愛莉『浮気したのは先輩でしょ!もう止めてください!』


愛莉先輩のハッキリした拒絶に注目が集まる。

向こうの女子バスケ部でも永瀬さんが目を丸くしてこちらを見ている。


キャプテン『…ちょっと早いけど追い出し会やりますか?』

二年生『やろう!』『やろう!』


そういうことになった。



わっしょい!わっしょい!

俺たちは差堀先輩を胴上げする!


差堀『おい!お前ら!俺好きすぎだろ!』


差堀先輩は自分は慕われてるって思ってるんだな…?


わっしょい!わっしょい!


差堀先輩を胴上げしながら体育館の外へ繋がる扉を開け放つ。


キャプテン『先輩これからどうするんすか?』


差堀『浪人!一流して良い大学行くわ!だから!愛莉!』


(一留じゃないの?)

差堀相手に突っ込んだら負けなんだよ。

キャプテンが呆れながら、


キャプテン『…もう働けば良いじゃないすか?』


差堀『絶対に働きたくないでござる!』


どこかで見たネタのようなセリフを言いながら愛莉先輩にまだ縋ろうとする差堀先輩を少なくなったとは言え、除雪で溜まった雪の中へ皆んなで放り投げる!


差堀『うわ!』


ぼふん!!!


『頭冷やせー!』

『とっくに代替わりしてんだよ!』

『愛莉先輩の仇!』

『勘違い野郎!』


キャプテン『まじで練習に参加しないならバスケ部出入り禁止ですよ?』


キャプテンがキッパリ通告した。

…また来そうな気はする。





☆ ☆ ☆

望の変態撃退奥義


夏休みごろの立花家。


望『それでね?変質者を!このスラッパーちゃんで?ビシッとスナップ効かせてブっ叩くのー!』

※スラッパーちゃん…30cmほどの黒いレザーに板バネが挟んであって、ぱっと見靴ベラに見える護身用具。すっごいしなって殴打力は抜群。いつも望のハイソックスに収納されている。

90話 2歳差 参照


『…猛獣のまんまじゃん。』


望はニコニコしながら、


望『足の指から足首、膝、腰、肩、肘、手首、指先まで同時加速でほぼ瞬間で変質者を滅多撃ちにしちゃう!名付けて!屑竜閃!』


『…それ大丈夫?色々?』


望『スラッパーちゃんは護身道具だよ?大丈夫、死なない死なない(笑)』


『…テニス部の望が全力で打ったらやばいと思う…。』


望『だったら?宏介兄ちゃんが守ってよね?』


少し恥ずかしそうに望は言うけどさ…?

承が笑いながら教えてくれる。


承『…望こないだ明治剣客浪漫のアレ読んだんだよ…。』


望『一瞬で10発殴打できるよ!ほら!』


『その技って9発じゃないの?』


望『おまけ♪』


(変質者はこの見た目だけは愛らしい女の子が猛獣だってわからんだろうなぁ。)


望はいつか変質者とか変態に食らわせてやろうって虎視眈々と狙っているよ。

この技が実際に振るわれるのはもう少し後の話し。

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