第100話 センター試験とあの男

いよいよ今週末は大学入試センター試験が始まる。

俺も2年後にはそっち側だし心配…。

俺は県の名前を冠した国立大学を志望している。

そこ志望は校内にも多い。

例えば愛莉先輩や永瀬さんなんかも国立県大を志望らしい。


2年次からクラス分けで特進に入ればかなり可能性は増える。

毎年何人も合格者出してるしね。

まずは3学期を綺麗にまとめて?特進入り!



そんなわけで校内雰囲気もちょっと慌ただしい。

1、2年生は普通、3年生はちょっとピリついてる。


まあ、2年後は当事者だしな?

頑張らないと。

そう思いながらも勉強と部活の両輪を回して俺は前に進む。


授業や家での学習で凝り固まった体を体育や部活で開放して全力で動き!鍛える!

大会や試合前のピリついた感覚や、緊張感も好きだけど、このちょっと間の空いた期間も結構好き。

でも、この期間が重要、試合前の特訓より日常的な訓練!って愛莉先輩のお言葉に感銘を受け、ずっと地味辛い肉体改造を続けている。

試合でも、結果出せたし、良く考えられたメニューで愛莉先輩のトレーナーとしての能力に疑問は無い。

俺も!ってキャプテンと友人の康司が名乗りを挙げて特訓希望だったけどいっぱいは見れないって断られたふたりはしょんぼりしてたけど、押しに弱い愛莉先輩は年明けからキャプテンと康司用のメニューも手掛けるようになって。

ふたりは真剣だけどちょっとデレデレしながら愛莉先輩の指導を受けている。

…俺は黙々とメニューこなす。



部活終わって、大体1時間居残り練習をしてる。

これはもうずっとやってきた事。


体育館の向こう側のコートには女子バスケ部。

同じようなもので、向こうも終わって片付けと居残り組が動いてる。


向こうに永瀬さんが居て、また差堀先輩がニコニコ話しかけている。

永瀬さんは人当たり良いからそれを苦笑いでいなしてる。

遠目で見ても、差堀先輩1人で盛り上がって、永瀬さんは苦笑いで相槌。


遠目でも大きめTシャツにハーフパンツ姿の汗かいて上気した永瀬綾は人目を引いてた。

男子バスケ部も見てる奴居る。

そうゆうの止めたほうが良いよ?



そう、思ってると。


愛莉『宏介くん。メニューどうかな?

無理や負担かかって無い?』


愛莉先輩が来てくれた。

先輩も他のマネージャーとマネージャー業務もこなしながらのトレーナー業務お疲れ様です。


『…大丈夫です。…ドライブのパターンとして考えてたのでこういうのはどうでしょう。』


愛莉『うん、良いんじゃ無いかな?選択肢があるって事が余裕になるし、相手も的を絞らせないってだけでバリエーション作る意味はあるね?』


通用しないバリエーション増やしても仕方ないけど、武器は何種類かは必要。

俺は親友の承を参考にする。


親友の承は子供の頃から体力不足を補う為走り込んでて。

短距離はそんなでも無いんだけど長距離では俺全然敵わない。

そんな承の必殺技がサッカーの時もバスケの時も急ストップなのだ。

トップスピードから強靭な足腰での急停止!

スピードに乗る能力とまた違う筋力が必要で。


俺はそれをして見せる。

愛莉先輩を相手にドリブルで抜けるか?!


一回目、愛莉先輩はトップスピードを止めきれず体が振られてしまい、俺は簡単にフリーになった。

なるほど…愛莉先輩は呟く。

愛莉先輩は身体能力高く無いけど目が良くてよく見てるから指摘も本当に適切。


二度目も体のバランスを崩す愛莉先輩。


愛莉『なるほど…でも意外と消耗するんじゃ無い?』


『…そうなんす。だから2回見せて意識させられれば…?』


愛莉先輩自体はプレイヤーとして凡庸で、特筆すべき身体能力は無いんだけど弱点見破ったり分析力と女子力がずば抜けて高い。


3回目、


愛莉『こう!やって!密着マークされたらどうかな?!』


『…?!』


確かに…!トップスピードからの急停止に体や足腰が追いつかないってフェイントなわけで…!トップスピードに行けないほど密着してマークされると…。


でもさ?密着マークはマークする方が余計に動かないといけないから、スタミナ消費が激しいのと、密着した分だけかわされるとついていけない。

反応さえ出来れば着いていける距離をとるマークの方が良いなって思うポイントなんだけど…。



むにゅ


むにゅう


ぽよおん



…めっちゃ愛莉先輩が当たってる…!

密着マーク危険!!



俺は愛莉先輩にストップかける!

これ危険です。


頭にクエスチョンマークを付けて愛莉先輩は首を傾げる。


愛莉『どうしたの?宏介くん?

違和感とかある?足?見せてごらん?』


最近愛莉先輩は俺の女性恐怖症を理解してくれて距離を置いて、良い距離を保ってくれている。でも本質は心配性で優しくっていつも後輩を気にかけてくれる綺麗で優しいお姉さんなんだよね。


俺、胸当たってるって言いにくい…。

真面目な練習中にそんな事気にして!とか言われそう…。

って言い出しかねていたら、




永瀬『すとっぷ!ストーップ!天堂先輩!お色気攻撃は卑怯です!』


永瀬さんが体育館の向こう側からすっごい勢いで走ってきて?

その後ろから差堀先輩も遅れて走って来て?おそい。


いくら受験生とは言え…差堀先輩なまりすぎじゃないっすか?

愛莉先輩はバスケ部の精神的支柱にして皆んな心の拠り所。

差堀先輩は勝負所にはバテていて使い物にならないことから、


『愛莉は柱、差堀は走らん。』


って、バスケ部では言われ続けてきた。

そんな差堀先輩は、唾を飛ばしながら文句言う。


差堀『愛莉!それやめろ!宏介に乳当たってんぞお?!』


永瀬さんは笑ってるけど、お触りは厳禁って厳しい態度。

差堀先輩は笑って無くって、それ俺の!って態度。


愛莉『…もう別れたので何か言われる筋合いは無いです、先輩。』


愛莉先輩にしては強い拒絶。差堀はそれでも食い下がる。

…もう差堀で良いよね…?



それより!って顔で愛莉先輩は俺の方を向いて、


愛莉『…宏介くん?当たってた…?』


真っ直ぐな大きな目に嘘は付けなくって…


『…はい、それで止めました…。』


愛莉先輩は蒸気がでそうなほど真っ赤になって、俯いた。

自分の主張激しい胸を両手で抱きしめて、か細い声で、


愛莉『ごめん!ごめんね!

…つまらない物で恐縮です…。』


お世辞にもささやかな物では無くって?

肘に背中に残るぽよんとむにゅうはちょっと忘れられない…。

でも、なんかすっごい怖い…俺女の子怖い…!



康司『宏介ばっかり!なんで?!』


キャプテンは血涙を流しそうな程見つめてるし。

康司…俺には俺の悩みあるんだよ…!


差堀先輩はまだエキサイト。自分は今まで永瀬さんを口説いていたのに、


差堀『俺と別れても!俺を好きでいろよ!

浮気すんなよ!』


愛莉『もう別れたでしょ?浮気じゃ無いです?

先輩の浮気でわかれたんでしょ?

自分は女子大生と!って触れ回ってるくせに!!』


差堀『俺は良いんだよ!お前はダメだ!!』


愛莉『意味わかんないです!もう関係無いでしょう!』


差堀『愛莉が他の男のモノになるのイヤなんだよ!』


愛莉『私はモノじゃ無いです!』


差堀最低だな…。俺口出そうかと思ったところで、

差堀の相変わらずの不条理ワガママが炸裂したところで、


愛莉『…こんな事してるよりセンター試験の対策した方が良いんじゃ無いですか?』


愛莉先輩がすっごく冷たい声で宣告する。

愛莉先輩の冷たくあしらう様は珍しくって、みんなの注目を集めちゃう。


愛莉『やだ!私ったら!そうゆう事です!

じゃ、私マネージャー業務に戻るから!』


愛莉先輩はごめんね!って手で合図して出て行った。

本当、愛莉先輩は優しいね、元カレのセンター受験に注意してあげるなんて。


差堀先輩は鼻でフッと笑うと、俺に牽制してくる、


差堀『おい、宏介。

あのバインバインは俺のだからな?』


『…。』


そりゃ俺のじゃ無いよ。でもあんたの物では決して無いだろ。

差堀はまた鼻で笑って俺に言う、



差堀『愛莉はまだ2年だから知らないんだろうけど?俺指定校推薦だから?

どんなすごい点取っても他校には行けないし?形だけの受験なんだぜ?

後で愛莉に教えてやって?』


はあ?

俺は知ってる範囲だけど、聞いた話ですけどって前置きして。


『…指定校推薦で受験する生徒のリスクとして、受験を最後までやり遂げていない為、大学3年に始まる就活で、粘り強さを欠き、いい結果を残せないという調査結果があるそうです。

成績をぎりぎりまで頑張って伸ばし合格した、一般入試組と学力差が顕著に出る為、大学卒業までその差が埋まらない場合が多いらしいです。

また、早い時期に合格が決まり、遊び気分になられると、大多数の国公立一般入試を目指す生徒に迷惑。


その為、高校では指定校推薦者には、センター試験の受験を義務づけセンターで、あまりに酷い成績をとった場合、指定校推薦の取り消しという脅しの要素があるはずです。

せめて、1月まではしっかり受験勉強を続けるようにという意味があるのだと思います。

もちろん、指定校推薦で合格した大学以外には入学できません。』



差堀は、ん?って顔して、


『ごめん、もう一回言って?』


俺は繰り返した。

長いセリフはしんどい。



差堀『…はは…こうしちゃいられねえぜ!

あばよ!後輩ども!

綾ちゃん!またね♪』


先輩はすごい量の汗をかいて出て行った。

記念受験のつもりで居たんかな?


要領が良くて成績は中位位と聞いてるけど…。

指定校推薦は後輩に影響出るのでマジ勘弁してください。


『…永瀬さんっていつも大変だね?』


永瀬『…そう思うならさ?

…まあ良いや。変な男ばっかり。』


永瀬さんはんー!って両手を上に身体を伸ばすとばいばい!って言い帰って行った。

んー!って伸びたところで腋チラとヘソチラがあって康司を始め男子が釘付けだった。

永瀬さんは無防備にすぎると思う。

俺はもう少しだけ自主練して帰ったんだけど、キャプテンと康司が相手してくれて俺に密着守備して来た。

なるほどね、密着守備を剥がす良い練習になった!



☆ ☆ ☆

外伝除く通算100話は差堀先輩と愛莉先輩の話でした!

そして20万PV達成できました!

いつも読んでくれてありがとうございます。

コメント、☆、♡がモチベです。

いつもマメにコメントくれる皆さんに感謝!


ある

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