第96話 ピッグモーター強制捜査【side三島皐月】

私は赤点2個で冬休み前半は補習に明け暮れた。

2個だってかなり苦しい。

でも、彼氏の正輝は赤点3個なのに、結局補習に出て来なかった…。

電話やロインで大丈夫なの?!って問い合わせるけど、



正輝『今、本当にそれどころじゃ無いんだよ。』


とか


正輝『学校もわかってくれるでしょ?俺が行って学校に迷惑かけるのも。。』


って。本当大丈夫なのかな?

補習も終わって、追試も多分いけたはず!って手応えを感じてる間にあっという間に大晦日、元旦って来て、正月期間が過ぎ、新学期が始まった。

正輝はまだ学校に来てない。


ピッグモーターの悪質さは日々ニュースに取り上げられて、日本中の反感を買っている。

親族経営で好き放題!

ドラ息子!夜の豪遊!

社員にセクハラパワハラ三昧!

貪欲に儲け至上主義!

とか、週刊誌にもピッグモーターはたくさん載ってる。



その日、久々に正輝に呼ばれて駅前のカラオケボックスへ向かう。

今日はひとりだね…?

正輝は不安そうに、



正輝『皐月、俺明日テレビデビューだわ。』


『ええ?!大丈夫?』


正輝『どうしても会社の金の使い道とかの説明で会見開かなきゃで?俺も説明しなきゃならないんだって。』


『…絶対余計な事言っちゃダメだよ?』


正直、不安しか無い。


☆ ☆

翌日、記者会見の模様が中継された。

パシャ!パシャ!フラッシュが光ってすごい!

正輝はフードを目深にかぶり、でっかい伊達メガネして顔を出来るだけ隠してるね…。


記者から説明が飛ぶ。


『役員や社長、親族の給与が一般社員の10倍以上とバランスがおかしいですが、人件費の設定やバランスはどうお考えですか?』

『社員に無理難題を押し付け、昇給分以上必ず減給させていたのは不当じゃないですか?』

『儲かればそれでいいんですか?』

『水増し請求と空請求は調べるととんでも無い額ですが、会社ぐるみの犯行ですか?』


正輝パパと弁護士さんはのらりくらりはぐらかしてる…。

コレで

済むわけないよね。


話は正輝の事に移る。


『社長の息子さん高校生ですが、働いた実績や出社歴無いのにアルバイト扱いで給与が出てますが!どうなってるんですか?!』

『しかも時給五千円で設定され、働いた実績無いのに毎日数時間勤務したていで給与支払ってますよね?

何処へ遊びに行っても研修費用で領収書切ってますよね?どうゆうつもりですか?』

『こんなお金かけて、バカ息子を育てていたんですよね?』


正輝を馬鹿にして!嫌な記者だな!

私はプンプンしてると、正輝もイラついてる…。

正輝はダメでしょ!ここは謙虚な姿勢で、誠実に対応しないと…。


正輝マイクが向けられてる、でも?

正輝は気づいていない!大丈夫?!


会見場で、油断した正輝は、



正輝『チッ、うっせーな…。』


つぶやきをマイクに拾われた!



『正輝マイク!マイク入ってるよ!』


テレビに言っちゃうよ!マイクで音拾ってるじゃ無い!


正輝は記者からの質問を聞き流してる…。

テレビで見ててもバッチリわかっちゃうほど誠意も無いし、今だけ凌げれば良い!ってわかる会見だった。



正輝『反省してま〜す。』


これはダメだ…。もう手遅れでしょ?


会見後、ピッグモーターと正輝は大炎上!会見の様子や謝罪時の誠意の無さ、反省、謝罪の意思の無さが繰り返し取り上げられた。

特に正輝の『ちっ、うっせーな…。』と『反省してま〜す!』はネタに散々使われて妙な知名度まで持つに至った。



そして、相次ぐ不正や儲けるためなら手段を問わないって経営の体質もあり、

ついにピッグに強制捜査の手が入った。



☆ ☆ ☆

正輝『いやぁ、本当に大変だったんだよ…。

強制捜査ってほんと強制に捜査するのな…?』


『そりゃあそうでしょう?』


正輝やパパはなんのかんの言っても、本当に強制捜査されないって思ってたって。

捜査断ったり、プライバシーに配慮があったり、証拠を隠滅する時間が与えられたり、そこまで執拗に調べられたりはしないって思ってた…って。


そんなわけ無いでしょ?

高校生の私でもわかるよ?


正輝『あいつら、全部持っていって調べちゃうんだぜ?本当に全部。

止めてって言っても聞きやしないんだ。

ちょっと収支を誤魔化して、多めに利益分配して、会社を私物化しただけでだぜ?』



『そうゆうのを調べる為に来たんでしょ?』


正輝『まぁ、そんな経緯で、とても補習や追試どころじゃ無い状態だったんだよ。

学校側も考慮してくれるんじゃ無いかな?』


学校側も配慮はしてくれるんじゃない?

でも、学校の配慮ってきっと…。

呼び出された教員室へ向かう正輝。

担任からの再三の呼び出しにやっと応じた形だ。



担任『だからね?山本くん、学校側はもちろんその経緯はわかってるよ?』



正輝『だったら!なんで?なんでですか?!』



担任『だって君、補習も追試も受けて無いでしょ?

それじゃあ単位取れないでしょ?だから、もう一年…。』


正輝は半狂乱になりながら、


正輝『マスコミが殺到してて、なかなか外も出れないし、学校にも来れなかったんです!

理由があったんです!』


担任『うん、それはわかる。だからもう一年学び直すのを学校は提案するよ?

君が二学期の赤点が三つで、出席日数も、補習も追試も課題提出もどれとして成績不足を補える要素が無いんです。』


正輝『でも…。』


担任『学校は学ぶ場です、事情があれば多少は温情や大目に見る事ありますが…。

君は成績もそうだし、補習追試を受けなかった。

これは学ぶ気が無い、姿勢が無いって事と見ます。

また、来年学び直すのを薦めます。』



正輝『…そ、そんな…留年なんて…。』


『…。』


正輝頼まれて、教員室へ付き添ったけど…。

彼は甘く見過ぎてた。学校も会社も社会も。

正輝は呆然自失様子で、ぼんやり帰って行った。


☆ ☆ ☆

山本正輝留年決定。

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