第94話 縛り【side小佐田恋】

そして次の日の放課後。

友永が九頭くんを連れて来た。

私もギャルと優等生のふたりを同席させて友永九頭カップルの相談にのる。


友永から大体聞いたけど、私は一応九頭くん話も聞いてはみるよ。

…まあ、想像してた通り九頭くんの噂もかなり広まっていて?

針のむしろのような状態らしい。

九頭くんは心当たりあるの?って聞くと…。


九頭『…結構男子には女の子絡みで?逆恨みされてるかも?』


だって。

元々九頭くんは女子には良い顔するけど、男子に友達は居ない男だよ。

イケメンだし、頭あんまり良く無いけど、テニス部では活躍してるって事は私も聞いてる。

女の子に手広く良い顔するからモテるけど、チャラくて避ける女子も居る賛否両論王子って印象。

…私は嫌い。チャラいし、女の子に声ばっかかける男なんて絶対信用出来ない。

同中の永瀬に声かけてるの見かけた事もあるし。

…でも、友永にこいつ会わせちゃったの私って負い目もある。



私は話しを聞き、少し考えるフリして溜めたあと、ふたりに提案する。


『話はわかった。友永から頼まれたってのもある。

九頭くん、噂に困ってるのはわかったよ、私と約束出来るなら噂はなんとか出来るかも?』


九頭くんの悪い噂はそれはもう、数が多く種類も豊富できっと何者かが流してるんじゃ無いかな?って思われるほどの量と熱。

文化祭で成立した伝説的な知名度を得たふたりのスキャンダルに実際停学になる醜態。

知名度が高い分、ダメージも大きく、なかなか鎮火しない。

九頭くんも参っているみたい。

ここだけ見れば友永の方がメンタルがず太くて感心する。



九頭くんはすがるように私の手を取る…。

取らせるはずも無く、ばし!!って連れのギャルが定規で叩き落とす。



ギャル『おさわり厳禁ですよー?』


九頭『そんなつもりじゃ!』


こいつの女癖の悪さは薄く噂があったけど今回の悪い噂で一気に広まった。

それをなんとか出来るかも?って言うと九頭くんは飛びついてきた。

顔を輝かせ、本当?って繰り返してる。

でも?いいの?私そんなお人よしじゃ無いよ?



『じゃあ、約束できる?そんな難しい事じゃ無いよ?』


友永『うん、する!なんでも言って?』


九頭『うん、これがなんとかなるなら…!お金とか命とかじゃ無ければ…。』


私を何だと思ってんの?

闇金融のマンガとかじゃ無いんだから…。



私は苦笑しつつ、2人に伝える。


『じゃあさ?ふたりは、在学中は《絶対》》に別れないで?

卒業後とかなら良いけど。』


ふたりは『は?』って顔。

友永はそんな簡単なこと?って顔。

九頭はそう来たか?!って顔。



友永『…そんなので良いの?別れろじゃ無くって?』


『うん、むしろラブラブで?一緒にいつも居た方が良い。』


私の肯定に友永はにっこにこ。

なんだ!そんな事で?良かったね!九頭くん!

笑いかける友永に、苦笑する九頭くん。


九頭『…絶対なんてこの世には無いよね…?』


『だから?在学中って言った。』


九頭は私の意図に気付いてる。

私は承知で推し進める。


今の悪い噂は九頭くんのこれまでの女癖の悪さがメイン。

それに赤点、今回の文化祭の劇的告白がヤラセで、不純異性交友で、斉藤くんの功績横取りの、それ以外でもこれまでの女性遍歴や、永瀬綾への付き纏いの話。他校の女生徒に性暴力の噂まで

永瀬綾本人が流してるんじゃ無いの?ってほど永瀬綾への付き纏いの話は具体的かつ豊富で笑える。こんなに断られてんのに良くアプローチするね?って。



この悪評は九頭くん痛い。

男子に全く人望無い彼は女子の支持は絶対必要。

友永と付き合っても、九頭くんが好き!付き合いたい!って言う女子以外は人気が落ちないほど今回のミスコン告白からの付き合う流れはシンデレラストーリーで女子からも付き合い始めた直後はむしろ人気が上がってたんだから。


それを帳消しどころか裏返ってもう大惨事。

今は完全に嫌われ者の、嘘つき女たらし野郎って扱い。

…事実無根じゃないからね?多分。

私としてはこのまま2人が没落してっても問題無いし、関係無い。

でも映像研との約束あるし、こいつら野放しにも、斉藤くんに迷惑かけるような事態は困る。

だからこその提案。


これなら、色々悪い噂はあったけどふたりは愛し合ってる。

だから行き過ぎてしまった。

悪い噂もあったけど今はふたりはお互いだけ見てるからって。


これを私たちがサポートするし、噂も流す。

それならば、

友永はやらかしたけど九頭くんが好きでやらかした事で通すし、

九頭くんだけを見てるから斉藤くんに迷惑はかからない。

友永は多分九頭くんに迷惑をかける。


九頭くんも女癖の悪さや中傷の噂がある。それでも色々仕出かしたけど今は友永一筋!って姿勢ならこれ以上の悪評は出ないだろうし。

第一女子人気がガタ落ちだから校内でもうモテる事は無いだろうけど彼女が居てしっかり彼女に誠実な男の方が女子の評価は上がる。

友永と真面目に交際する事で悪い噂を軽減出来る。

そもそも付き合ってるんでしょ?なんのデメリットも無いはず。

…別れたいとか、他の女の子も狙ってるとかじゃ無きゃね。



九頭くんは今の現状の、


友永と付き合ってる→友永と付き合ってる、別れない。

別れないを足すのを躊躇ってる。

それだけで九頭くんが不誠実で私が嫌いなタイプの男子だってわかるよね。

それがわかるからこの約束は九頭くんにとって意味のある縛りになる。

こういう男は野放しにしちゃいけない。

ほんっとまじ嫌い。



ギャル『えー?約束出来ないんー?』

優等生『…あり得ない。』


九頭『え、あ、いや、絶対なんてなかなか言えないって言うか?』


だっせえ言い訳してるけど、太って戻って来た友永に嫌気さしてるって噂も多分本当なんだね?


結局、九頭くんは自分の今の窮地と安全と欲望を秤にかけて、



九頭『…わかった、約束する。

友永さんと別れないよ。』


友永も同じような誓い言葉を口にしたが表情は正反対だった。

一応断ってそれを録画した。これでこの誓いは意味を持つ。






ふたりが出て行った。

九頭くんに嬉しそうに話しかける友永に、渋い顔の九頭くん。

私はつぶやく、


『九頭くん…って言うかクズでしょ。』


ギャル『アイちゃん辛辣ー!』

優等生『女の敵だよね!あんなの!』


『いずれ、友永もクズの本性に気付くよね?

…その時別れないって誓った事が良かったのか悪かったのか?』


連れのふたりも頷いた。


『でもさあ、私クズくんダメ。

生理的に無理!

もし、自分の吐いた反故にするようならさ?』


優等生『わかった、見かけたら注意して見ておくね。』

ギャル『こっわw恋ちゃん!』


今、私多分悪い顔してる。


『そん時はさ?徹底的に追い込んで型にハメよっか。』


ふたりは少し引きながら、


ギャル『そうゆうとこだよ?マジで。』

優等生『…それでこそ恋ちゃん。』



そんな訳で友永と九頭を監視しやすく、斉藤くんに迷惑をかけさせないように友永九頭ペアの互いしか見てないって噂、絶対別れないって噂を流す。

誓った録画もあるしね。


…もし、互いの本性や悪い面を知って別れたくなっても簡単に別れられないように。

最悪どっちでも良いんだけどね、友永が九頭くんに依存して斉藤くんに迷惑かけなければ良いし。

九頭が自由に女の子にちょっかいかけれないように制約できれば目的は果たせるんだしね?



そんな風に友永ゆかりと九頭の奴の行動を制限出来るような策を発動したんだ。

…これは問題なく効果があった。





でもね、友永ゆかりって人間を私は読み切れない。

少し先の話、友永ゆかりはまた私の想像の斜め上を行く。



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