第79話 私が出来ること【side天堂愛莉】
停学の余波 side斉藤宏介
友永ゆかりさんのミス北翔取り消しから数日後、
教員室前に張り出された紙に人が群がり、噂する…。
友永さんと九頭不純異性交友で停学10日間。
『えー、ショック…。』
『ゆかりちゃんが?』
『でも、最近噂聞くよね?』
『ああ、ドキュメンタリーでゆかりさんの横に見切れてたダイエットの協力者が違うって話し?』
あれだけ賛美した人達がくるりと手のひらを返しておかしいと思った、やっぱり。出来過ぎだよね?とか噂を広げる。
あれだけ、知名度が高い人間のスキャンダル。
それは噂になるだろう。俺の引き出しにもホテルに出入りするふたりの写真入ってたし…。
俺は人の群がる掲示板に背を向けて教室へ戻る。
停学明け登校して来た時が1番キツいんだろうなぁとは思ったけどビックリする位、何にも感じなかった。
☆ ☆ ☆
教室に帰り、次の授業の支度って思ってると浩と康司が話してて。
浩も康司も友永九頭カップル停学のニュース話しをしてたが俺が来たらぴたっと止めた。
いやいや、大丈夫だからw
そう言い、席にもどると、
永瀬『…宏介くん、あんまり気にしなくて良いと思うよ?』
『いや、気にしてないよ。』
永瀬『あはは!じゃ違う話しでさ?…バスケの代表の…。』
本当に永瀬さんは俺に気を使って話しかけてくれてる。
それが嬉しいし、申し訳無い…。
永瀬さんは人気者で誰でも分け隔て無く接するし、陽気で気さく、引くて数多の学年屈指のモテる女の子。
魅力を語ればキリが無いけど…俺は緊張してしまう。
それを察して永瀬さんはギリギリを攻めてくる。
ありがたいやら困ったやら。
学年屈指モテる女の子より隣の席の話の合う女の子ってスタンスが俺は気に入ってる。
もう来月には期末テスト、部活はウインターカップっていう大きな大会がある。
今はその2つに全力を注ぐ!
今回期末で成績上位なら来年進級時【特進クラス】に入れる。
一学年のトップ30名が選抜されるクラスで、諸々の特権や選りすぐりの先生による授業を優先して受けられるし、新設校ながら都内有名私大や国立大へ進学率が高いのはこの制度のおかげで。
俺もコレに入るのを目標にして来てて。
俺も永瀬さんも順当なら特進へ進級出来るはずなので油断せずにいくんだ。
そして高校バスケでは最大規模のウインターカップ。コレに標準合わせて頑張ってきた、絶対出たいし、結果出したい。
俺は燃えていた。
この二つの目標があったから、落ち込んでもすぐに切り替えられた。
勉学と部活、この両輪が俺を前に進めたんだ。
☆ ☆ ☆
私が出来ること。 side天堂愛莉
文化祭…私は焼きそばだった…。
部活の屋台でも、次クラスでも焼きそばを焼いて焼いて焼いた。
しかし、私がソースに塗れていた頃、宏介くんとゆかりちゃんの道は大きく隔たってしまった。
正直言って、私は宏介くんが可愛い。
真面目で真剣で、口には出さないけど情熱を秘めている子で…。
でも、宏介くんはゆかりちゃんと文化祭が終わったら付き合うんです…。
って、あの恥ずかしがり屋の無表情な子が頬を赤らめて私に言った。
…だからふたりきりはちょっと…。
私はショックだったなんで?なんでこんなに?
好きになって…なりつつあったんだ。私の中から声がする。
ああ、でも、それで良い、その方が良い。
ゆかりちゃんと夏から二人三脚で頑張って、一緒に過ごして。
これからも各種イベントや学校行事ずっと一緒に居られるもんね?
おめでとう!良かったね!
私は祝福できた!
祝福できた自分に安心した。
そうだよ、私みたいに年上じゃ、一緒に居られないもん。。
私の元カレは宏介くんみたいな事は言わなかった。
黙って愛情を示したり、真剣に向き合ってくれる事は無かった…。
もちろん自分の選択、押しに負けたのは自分の選んだこと。
…だけど、私はゆかりちゃんが羨ましかった。
良い男の子選んだね?お幸せに?
私はふたりの共通の先輩として?きっとこれからも携わっていく。
それでいい、2人の可愛い後輩が幸せだったら良いな…。
それだけに、先日の宏介くんの話しは衝撃的で動揺が隠せなかった。
ゆかりちゃん…貴女何をしているの?
宏介くんはついこないだ、元カノの三島さんの裏切られて…貴女だって怒ってたじゃない?!それがこんな事って…。
宏介くんはカミングアウトした、女性恐怖症で綺麗や可愛い女の子が特に怖い…と。
私はその晩考えた、一晩寝ずに考えた。
私に出来る事…
私はその日から、宏介くんに厳しく接した。
宏介くんは、今恋愛をしてる場合じゃ無い。
今彼に必要なのは成長する事、自信をつける事、成功体験。
これがあれば心は回復して、また自分に自信が持てる。
私は細心の注意を払い、ギリギリまで追い込むメニューを組む。
もちろん壊れて欲しく無いから遠くからは念入りに観察する。
練習の補佐やフォローは惜しまないし、栄養、水分補給など気をつける。
それでもスパルタと言える厳しいメニューを、特に弱点のスタミナや跳躍力、新しい武器の攻撃力を鍛える、鍛える、鍛える。
実際に苦しむのは宏介くん、でも宏介くんは私を信頼してくれて一任してくれる。
私は本当は抱きしめてあげたい、もう良いよ、頑張ったね?って。
でも、彼は今そうゆうものを望んでいない。
なら私が出来るのは出来るだけ身体を壊さないように細心の注意を払いながら離れてフォローするだけ。
キャプテンや康司くんからそれとなく厳しいんじゃ無い?オーバーワークじゃ?って言われた。
私は資料とコンセプトを見せながら説明した。
キャプテンと康司くんも参加したいって言ったけど、これ以上は見れないから自己練がんば!って励ましておいた。
私に出来る事は信じて鍛えるメニューを組むことと、そのフォローだけ。
練習終わり、1人で備品整理をしていると、女子バスケ部の永瀬さんが話しかけてきた。
珍しいな?この子はいつも人に囲まれてるけど私とはほとんど話した事が無いはずだけど?永瀬さんは少し憤るように、
永瀬『…先輩、なんで宏介くんにしごきみたいな練習を課すんですか?』
この子…。
『宏介くんが強くなりたがってるからだよ。』
永瀬『だからって、あんなにキツい練習後にさらにフィジカルメニューって…乱暴じゃ?』
咎めるような目つきで私に言い募る。
『宏介くんは、今苦しんでいる。
それは自分で打ち破るか、納得出来なきゃ解決しない事なの。』
永瀬『でも、あんなに!もっと優しくしてあげなきゃ!』
『じゃ、貴女が優しくしたら良いでしょ?
宏介くんの先を考えれば、私は今恨まれても、宏介くんが納得するまで追い込んであげる事しか出来ないから。』
永瀬さんは息を呑んで一礼して出て行った。
あんな子がまだ側に居るなら宏介くんはきっとすぐに…。
私は納得と寂しさを覚えながら、部室に戻る。
でも、確かに宏介くん私嫌いになってるかもなぁ…って覚悟してたけど胸はチクってする。
部室に戻ると、
宏介『…あ、先輩、練習後のシャトルランの本数なんですけど…。』
私は笑顔を出さずに淡々と説明する、
宏介くんは頷いて、
宏介『…いつもメニュ組んでくれて助かります。
…絶対期待に応えます…じゃ。』
後輩はちゃんとわかってくれてた。
私はやっぱり後輩が可愛い。
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