第9話 自分のポジション【side三島皐月】

第6話最後に会いにの前日の話。




人間にはそれぞれポジションがある。

特に女子はそれが強い。

カーストなんて言葉が使われるけど言い得て妙だと思う。

小5でわたしはそれを痛感した。

その為にはいくつも必要なものがある。

私も昔は冴えない地味な女の子だった。素材は自信があるけどそれだけだった。


部屋の整理をしながら少し昔を思い出す…。



小5の頃。

見た目文学少女みたいな、よく言えば清楚、悪く言えば地味な女の子だった私はクラス変えで比較的家が近所の、学年1の才色兼備な完璧女子『香椎玲奈』のグループに入った。

(『あの』香椎玲奈がわたしを認めた!)



なんせ!香椎玲奈と言えばクラスの中心的存在どころか学年一の万能の美人でファンは多くその存在感とリーダーシップは抜きん出ている!

その影響力とカリスマ性で色々な頼み事からトラブルまでなんでも舞い込んでくる。

私たち香椎玲奈グループはその処理に追われることも多いけど、頼み事をしてくるような子や下のカーストの子たちが私たちを見る目はちょっと違う。

優越感?感じちゃう!



香椎玲奈グループは香椎玲奈を筆頭にライバルで親友のNO2の小幡さん、成績優秀美人の一条さん、運動神経抜群で可愛い二村さん、わたし。で構成されている。

私は温和な文系地味美人って言われてるのを聞いた。2軍の女の子から。

すっと私が出ていくとピタッと話しを止める。

面と向かって言えないような女の子だ。


『どうしたのかな?何かあった?』


私がしっとり微笑むと、


女の子『…ううん、こないだはありがと。』


香椎さんに話しを通して色々してあげたの思い出した?

2軍の女の子の気持ちはわかるよ、1軍女子の方がキラッキラしてるもんね。でも、地味美人…美人とはついてるけど私はその位置が不満だな。



さて、女の子の話題に恋愛は切っても切り離せない。小5でも誰が好き!とか男の子で誰が好き!きゃー!みたいなノリはとても強い。

1軍じゃ無いけど香椎さんグループではある子がクラス男子の一番人気の神崎くんを好きで、位置的に良く話す香椎さんに仲介を依頼してた。

神崎厚樹くんの事好きなのー!って宣言して香椎さんに神崎くんの事なんとも思って無いよ!って宣言までさせて。


好機だ!私はその頃1人の男の子に注目していた。

クラス男子の1番人気の神崎くんのグループの宏介くん、斉藤宏介くん!

彼は目立たないけど神崎グループを実質的に動かしてる事に気づいていた!

宏介くんは地味だけど成績も優秀、運動神経も優れていて顔もすごい整っている!女の子みたいに可愛い顔してるの!

運動神経も優秀で無口でクールな男の子!少し背が低めだけどこれからの成長に期待!

ふだんは親友の立花くんに合わせてバカな話してるけど間違く格好良いよ!



先の神崎くんと仲良くなりたい!って女の子の件に絡めて実は…私…って香椎さんにお願いしてみる。

なにか機会作ってくれたら…無から男の子にアプローチなんてわたし出来ない!

そうしたら香椎さんは、


香椎『私の家でクリスマスパーティーしよう!』


ええ!?

すごい!パーリーピーポーって奴でしょ!イケてる人がやるやつだよねー!

香椎さんの万能感は半端じゃ無い!香椎さんならなんでも叶えてくれるかも?!神崎くん好き女子とちょっとわがまま言っちゃった。


席は彼の隣にして欲しい!彼の前で褒めて欲しい!色々フォローお願い!

親友の小幡さんも出てきてプレゼントは彼の物が当たるようにまで手配してくれる。すごい!

なんでも受け入れてくれる香椎さんの余裕と企画力に感心する。そして会議の為に訪れた香椎さんの家に入ってその豪華さに驚く。お嬢様なの?

でもね、私は香椎さんの恵まれっぷりにちょっと引っかかる。



わたしだって可愛くなる為に努力して、勉強だって頑張ってるのに?

なんで香椎さんはこんなに綺麗で可愛くて?頭良くて運動神経抜群で?

料理?ピアノ?なんでも出来てお姫様みたいにみんなにチヤホヤされて…?



少し引っかかっていたけど、ここまでしてもらってるし…ね?

なんせ私は香椎グループの一員だ。

…今はよく香椎さんを観察して、学んで、吸収するんだ!



クリスマスパーティーでは宏介くんの隣で仲良く話した!

無口な彼はシャイでわたしのアプローチにあたふたしてて可愛かった!

連絡先を交換して、私のプレゼントのスノードームは予定通り宏介くんの手元に届き、私は宏介くんのプレゼントの青い花束みたいなLEDで光るブーケみたいな可愛いフラワーギフトを貰った!可愛い!嬉しい!

宏介くんセンスあるなあ。

こうして宏介くんとの取っ掛かりを得たわたしは少しづつ距離を縮めた。



6年生になり、体育祭や修学旅行、文化祭とイベントをこなしていく。

私たち香椎さんグループと男子では神崎くんグループがクラスを運営している。神崎くんグループはクソガキも多いので大体企画、実行は宏介くん。香椎さんグループは主に香椎さんが中心だけど香椎さんが気を使ってくれて宏介くんと組ませてくれた。


香椎さんを心して観察するようになって色々気づく。

香椎さんはその能力の高さの割に表だっては動かない事が多い。先頭に立って!ってより率先してやってみせる方式か人に働きかけて揉め事や空気を変える方法をとりたがる。

その可愛さや能力から妬まれるから『みんなの為』って言う大義名分に囚われすぎてる?

私が香椎さんならもっと好きにやるし、上手くやれる自信がある!

あんなにスペック高いのに勿体ない。友達として惜しく思うけどまあ本人の好きだよね?


ただあの謙虚な姿勢、自分の本音を隠してみんなの為って大義名分で動く事、お上品にすましてる方がウケがいいのは参考になる!

地味美人とか言われてるけど、中学生に!大人になればわたしはもっと綺麗になる!そうしたら…。






そして小学校を卒業して、中学生になる。

2学期の終わりにクラス男子の中心の神崎くんが転校してしまって宏介くんがショックを受けてる。

それをフォローしつつ距離は少しずつ縮まった。

面倒なのは宏介くんの親友の立花くん!

こいつは邪魔ばっかりするんだ。

いっつもくだらない話ばっかり宏介くんとしてて結構な確率で休日一緒に遊んでる。

あのクールな宏介くんは立花くんが絡むと熱くなる。

わたしはそれが不満!妹もすぐ宏介くんにウザ絡みしてくるから本当に立花兄妹はお邪魔虫。

…でも宏介くんは立花兄妹をすっごい気に入ってるから顔には絶対出さない。

だっていつも漢とか義とか武将とか軍師とか?下らないことで盛り上がって?まあ宏介くんにも子供っぽいところがあって?可愛いなあとは思ってるんだけど?

そして、中学校進学を機に付き合う事になった!

卒業式後、私たちの関係って…?ってアピったら


宏介『…三島さん…ううん、皐月さん!

俺と付き合ってください!』



よし!言わせた感あるけど宏介くんに告白してもらってわたし達は付き合う事になった。

なんか吃音?吃り?についてカミングアウトされた。でも今は出てないし?後で調べたら遺伝するわけでも無いし、成長と共に治り事も多いみたいで。

今出てないなら大丈夫でしょ?でもコンプレックスなのか…ふぅん。


さて…付き合うからには?前から気に入らなかった立花妹を可愛がりすぎないでね?だって女の子だよ?宏介くんは彼女居るんだから他の女の子と仲良くしちゃやだ!って言ったら真っ赤になって頷いてくれた。

ふふ!空気読んでよ、立花妹!




宏介くんと春休みに2人でターミナル駅へ遊びに行った!

服1着奢ってくれて、中学生になるから文房具買い足して?

お互いにボールペンを贈り合った。



☆ ☆ ☆


『そんなこともあったっけなー。』


わたしは無造作に青いフラワーギフト、中学に上がる時に買ってもらったボールペン、もう着れなくなったその時買ってもらった服をゴミ袋に突っ込む。

ちょっと前までは宝物だったんだよね(笑)



次会う時にこのゴミ…いやプレゼント返してスッパリ関係を清算しよう!

それがお互いの為だから!

部屋の整理はもう少しかかりそう。








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