第8話 予想通りの流言飛語
そして翌日登校すると、
ひそひそ、ひそひそ。
やっぱり。予想通り…だなあ。
穏和な友達2人が急いで近寄る、引っ張られて廊下へ。
浩『宏介!』
康司『なんかお前が!三島さんに酷い事したって噂が…!』
やっぱりね。
でも、ロイン送っておいたからこの友人2人事情を知ってる。
『うん、でっちあげなんだ。昨日話つけたんだけど…。』
録音していた内容を2人に聞かせる。
時刻も昨日のだって見せる。
同じ学校のロインにってる人にはもう昨日の夜、事情だけ説明して俺に不都合な噂流れるかも?って伝えてある。
☆ ☆ ☆
皐月『一部、私と宏介が付き合ってたって知ってる人がいるわよね?
そんなに多くは無いけど私も言っちゃったのよ。
…そうすると山本くんとの交際期間が辻褄合わなくなるでしょ?
だから!もっと前に!円満に別れたって事にして欲しいの!
宏介の有責で!』
『は?なんで?浮気したんだから皐月が悪いでしょ?』
皐月『そうなると私と山本くんが悪い風に思われちゃうでしょ!
大体!別れるカップルなんて男が悪いに決まってるのよ!
離婚だって大体奥さんが慰謝料もらってるじゃ無い!』
『…離婚時の有責配偶者が慰謝料払うに決まってるだろ!
浮気や暴力離婚事由を作った方が有責なのは間違いないでしょ。』
皐月『は?私が悪いって言う訳!信じらんない!
さっき大好きだったよ!って言った口で私を責めるんだ!』
第6話 最後に会いに 参照
☆ ☆ ☆
2人とも引いてる。
と言うわけなんだ。
落ち込んで見せるが全部演技では無いね。
浩と康司は憮然とした表情で憤る。
だって自分で交際期間被ってるって、俺が有責な事にしろって言ってるって決定的な言質取れてるもん。
俺の方から広める気は無いよ。でも聞かれたら、俺は答える。
ちゃんと皐月が宏介がって名前呼びしてるし、スマホの録音に日時も入ってる。
浩も康司も噂の否定で無く悪意のデマだって広げてくれるって言ってくれた。
それでも日中何人かに言われる。
いちいち録音アプリで聞かせる面倒くささ!でも怠るとまるで俺が悪くて、皐月が可哀想で山本はそれを救ったヒーローみたいな噂を信じて俺に突撃してくる輩が男女問わず多い。
昼休みに入り隣の席の永瀬綾が話しかけてくる。
永瀬『宏介くん、お疲れ?
今日は大変そうだね?』
宏介『…まあね。
無事別れたんだけど…デマ流されて辟易してるんだよね…。』
自然悲しい顔になる。
みんなに聞かせてるけどどんな内容なの?
そう言われて永瀬さんにも聞かせるけど、
永瀬『ひどい!全部自分の都合じゃん!
宏介くんの気持ちなんて微塵も考えて無いでしょ!』
ポニーテールを揺らしてぷんすこする永瀬さん、男子がめっちゃ永瀬さんを見てる!
…わかる。表情が豊かで目を引く娘だよね。健康的な色気があるっていうのかな?
永瀬さんが言うには噂はふたつ。
ひとつは、宏介と皐月は本当は付き合って無くって、宏介が皐月にベタ惚れでそうゆう噂を流してたけど皐月は知らなかった!最近山本くんと皐月付き合い出した!
ふたつ目は、宏介と皐月は一応付き合ってたけど、宏介の束縛、DVで困ってたのを山本が救ってふたりは付き合い出した!
って。
なんとなくひとつめは山本がふたつ目が皐月が流した噂っぽい。
前者はさらっと悪意は少なく、お互い誰もダメージが少ない効果は薄いけど地味に浸透しそうな低リスクローリターンな安全策。
後者は完全に皐月と山本のみ利益があり、宏介こと俺だけ悪者!こっちのがスキャンダラスで広まりやすく、皐月側に同情が集まる一見効果が高そうだが、自分で俺と付き合ってるって言っちゃった人も居るから『付き合ってる』って追認しちゃってるじゃない。
(今更、付き合ってるって言われても…。)
スキャンダラスなだけに、本当?!ってなる人も多いし、俺の耳にも入っちゃう。
俺が対策を用意してればそれで打ち消せるし、それどころかその噂誰が流した?誰が得する噂って考えれば誰が出どころで誰の陰謀?ってすぐにわかっちゃう。
最初のローリスクローリターンでずっと噂されてる方が俺は辛い。俺との事が無かった事になり、俺がこんな事言われた!って録音聞かせても逆になんだあいつ?ってなる可能性すらあったよね?
…客観的には皐月の言葉が酷すぎてそれでも同情位はもらえそうではあるけれども。
整理しながらそんな話を永瀬さんにしてると、
永瀬『昨日はかなりショックそうだったけど…冷静だね…すごい!』
(すごく無いよ…、寝取られ野郎の俺の最低限の防衛策だもん…)
そんなこと思いながら、
『永瀬さんやみんなが励ましてくれたから…。』
そうだよな、田中くんとか昼休みあーだこーだ言ってた内容がそんな事で証拠取っとけ!誰か付いてた方がいい!とか撮影しておこう!とか言われて、あ、録音だけしておこう!ってなったんだもん。
皐月に罵られて別れを一方的に告げられた日にはとてもそんな余裕は無かった。
永瀬さんは俺を力付けてくれた!
今日は結局何人かに皐月との会話の録音を聞かせて、経緯を説明する1日だった。
放課後、
バスケ部の練習でも噂のことを言われる。
俺は改めて冷静に説明する。
差堀『いや、どうせお前がゲスいことしたんだろ?』
承が言ってた。人間は自分の器でしか人を測れない。本当にそう思う。
?『差堀先輩は心にも無い事言っちゃうの。
宏介くんごめんね?』
そうフォローするのは二年生の女子マネージャー
愛莉先輩って呼ばれる俺たちの癒し。
愛莉先輩は茶色い光沢のあるロングヘアでちょっと垂れ目のバインバインなお嬢様って感じの学校内でも評判のおっとり美人!
優しくて、頭も良い。運動は苦手だけど一生懸命にバスケ部の裏方仕事を一手に引き受ける優しいお姉さん!
唯一にして最大の難点は…さっきの差堀先輩が彼氏なこと…。
差堀は卑しい、愛莉は癒し!ってのがバスケ部の合言葉(笑)
愛莉『…宏介くんは噂みたいな事しないわよね?』
首を傾げて当然にように信用してくれてる事に嬉しさを感じつつ、録音を聞いてもらう。
愛莉『うん、うん。だよね?
私も聞いたら今の話ししておくね?
気を落とさないでね?』
本当に愛莉先輩は癒し。
差堀は本当に愛莉先輩に感謝して生きた方が良い。俺はそう思う。
俺は数日、噂のことを聞かれるたびに打ち消して回った。
それは当然、皐月には気に食わない事なわけで。
三日後すれ違った時にすごい目で睨んできた。
…いや、本当に意味がわからない。
なんで俺がサンドバックにならなきゃいけない?
そっちが悪質なデマを流したんでしょ?
俺は自分から証拠録音を流したわけじゃあ無い。俺まで聞きに来る奴にだけ証拠録音を聞かせてるんだよ?
何か心当たりがあるなら、皐月もそのデマ流れないように手を打った方が良いよ?(笑)
それでも俺から積極的に噂を打ち消して皐月有責!とか声高に叫ぶ気にはならなかった。
こうしてなんとか悪質な噂を流されたが凌ぎ切った。
俺は、見返す為に勉強も部活も全力で取り組む。
失恋から目を逸らす為でもあったが。
思い出すと悔しさと悲しさでおかしくなりそうだったから。
あんなになっちゃったけど、俺は皐月が好きだったから。
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