第5話 皆、違う事を言う。
朝から元カノ、三島皐月と会い、思ってた以上の事を言われ、茫然自失になり一本遅らせた電車で学校へ向かう。
俺たちの通う北翔高校はまだ新しい高校で、偏差値は中の上、スポーツにも力を入れる高校だ。
小学校は野球、中学は卓球をしてきたが高校ではバスケットボールを選んだ。
まあ部活なんて趣味程度。別にプロを目指すわけじゃ無い、一生懸命仲間と楽しめて体が鍛えられたら良い。…実はバスケで身長が伸びたら良いな…って思ってはいる。
あと友達の頼みで映像研究会っていう同好会にも入っている。
同じ中学の友達、田中くんたっての頼みだったから。
田中くんとは一緒に動画作成した事があるのだが、それでハマったらしく田中くんは映画を撮りたい!ドキュメント撮りたい!って燃えてて映像研に入って、人数欲しい!って掛け持ちを頼まれた。
一昨日の放課後に皐月に急に言われて、昨日休んでしまったからクラスメイトや友人、高校に入ってからの知人たちに『その話』はしていない。
皐月は恥ずかしがって、秘密にしようね?って言ってたけど、俺も皐月も近しい友人たちには付き合っている事を話している…。
報告した方が良いのかな?しない方が良いのかな?
なんというか判断がつかない。
…向こうから何かあった?って聞かれたら、信頼できる人にだけ、話をしようかな?
みっともない。でもだれかに聞いて欲しい。めちゃくちゃになった俺の弱い心はなにか答えを探してる。
当日、昨日と考えて悩み抜いて皐月にはありがとうって想いがあるんだ。
でも割り切れない悲しみ、怒り、嫉妬、嫌悪、不安様々な感情が温泉の源泉のように次から次へと湧き出して、とどまる事を知らない。
学校へ着くと、早々に田中くんがやってきた。
田中『宏介くん!大丈夫?』
中学以来の友人は事情を知ってる。昼休みに話すよって伝えて、もう大丈夫って伝える。
自分の仲間たちにもどうしたよ?サボり?なんて手荒い歓迎を受ける。
俺が休んでたなんて事は世界には全く関係なく時間は過ぎて、世界は回る。
一日休んだだけで授業が進んでる…。
1限目が終わると隣の席の子が話しかけてくる、
?『ほら、休んだとこわからないんでしょ?
昨日のノート貸したげる!』
隣の席のすっごい美人。
永瀬 綾(ナガセ アヤ)はスラっとした美人で文武両道。
女子バスケ部と生徒会の庶務をしていて、男子に大人気のポニーテール美人。
アクティブな子で同じ(男女で分かれてるが)バスケ部だからすごく話しかけてきてくれる本当にいい子なんだ。
『…ありがとう、永瀬さん。』
永瀬『ふふ、良いって!
昨日は何で休んだのー?』
聞かれたく無い…。
『…んー、まあ?色々?』
永瀬『色々?男の子の色々がわからないんだよねー?
まさか!フラれちゃった?』
イタズラっぽく笑いながら適当な事を言う永瀬の言葉はクリティカルヒットなわけで…。
『…。』
曇る顔、俯く俺。
永瀬『え?え?え?
まさか?!えぐった?!』
まさかだよ。
『…。傷口にクリーンヒットだね…。』
永瀬さんとは話す機会が多く、隣のクラスの三島皐月と同じ中学で、実は付き合っているんだって知らせてあった。
最近うまく行ってないって言いたくなくってそこはぼかしてたんだけど…。
永瀬さんは何度も謝ってくれたけど、全然彼女が悪いわけじゃ無い。
気にしないで?
少しだけ、話し込む。
俺どうしたら良いのかな?永瀬さんはどう、どう思う?
永瀬『そんなの!絶対に許せないよ!
女の子として最低だよ!心が離れて、別れたとしても!
筋は通すべきで、別れ方だってあるじゃない!
しかも、同じクラスの山本くん…?』
『…落ち着いてよ…。
…でも、ありがとう。』
人が自分のために怒ってくれる…承もそうだったけど、心強く、暖かい。
ありがとう、永瀬さん。
永瀬『気にしないで先に進めば良いんじゃ無いかな?
宏介くんは間違っていない。』
気にしないで進めばいい、か。
礼を言って、預かったノートを写す。
ノートの字は永瀬さんのように綺麗に整っていて、まっすぐだった。
昼休み、映像研
田中や田中の仲間や先輩が狭い部屋に固まってる。
田中『ロインでちょっと聞いたけど…?』
田中くんを部室から引っ張って、中庭に行く。
俺は一昨日の話し、承が来てくれた話し、今朝駅で会った話しを説明する。
田中『マジか…こないだまであんなに仲良さそうだったのに?
本当に?』
俺が嘘だと思いたいよ。
この3日が夢でした!ってオチならどれだけ良かったことか。
『…それで放課後、会いに行って来る。』
田中くんは怒りながら、
田中『もっと宏介くんは怒った方が良い!自分の気持ちに正直に!
そんなにサンドバックみたいにボッコにされてなんでそんなに穏やかなの?!
同じ中学の奴に積極的にこの話ししようよ!』
怒った方が良い、か。
それもそうなんだろうけど、気力が、どうしても足りない。
昼休みの半分を使い田中くんと話をして、残り半分は部室で映像研の人たちと混じって過ごす。
このほどほどの距離感の狭い世界の仲間が心地良い。
その後、午後の授業が終わり、放課後になる。
皐月に指定された時間までは結構あるから、少し友達と話しをして帰る。
2人とも似たような友達。
クラス内の俺の仲間はあっさりした付き合いで親友!ってほどの付き合いでは無い。でも軽い、浅いってわけじゃなくって。
陰キャって言うか?隠キャラって感じの穏やかな静かな心地いい仲間。
その2人に、実は彼女が居たこと、一昨日フラれた事をかいつまんで説明する。
えー!?食いついてきたけどすぐにそんな気分じゃ無いよね?
気遣いしてくれて、うんうん話を聞いてくれた。
その穏やかな気遣いが嬉しくて涙出そう…。
『宏介、落ち込むなよ?…いや落ち込むよな?』
『彼女が居たって事は俺たちより恋愛経験上なんだから…何も言えない…。』
ふたりはそれぞれ、
新しい恋をするしか無いんじゃ無い?
今回の事忘れないで。絶対次に繋げよう。
とアドバイスをくれた。
ちなみに、承は自分が思うように。って。
帰り道、皐月との待ち合わせ場所に向かいながら俺は考える。
今日聞いたアドバイスを思い返しながら。
俺にはますますわからなくなる。
自分が思うように。
気にしないで進めば良い
自分の気持ちに正直に怒れ!
新しい恋をする
今回の事忘れない,次に繋げよう。
どれもきっと間違っていないし、矛盾しているわけじゃ無いんだ。
それでも、その選択肢の多さに、俺は迷う。
昨日の夕方、交差点に立ちつくしてしまった自分を思い出してしまったんだ。
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