第4話 悪意の有るニアミス
彼女の皐月に突然付き合ってる男がいて、昨日抱かれたって言われて3日目。
もう顔合わせるのがしんどいと思ってた皐月と朝、最寄り駅でばったり出会ってしまった。
(何か言うべきか?…でも、なにも、なんて言えば良い?…頭ぐちゃぐちゃでなんにもまとまらない…。)
皐月は俺と目が合ってもなんにも動揺を見せないどころか、全く感情を動かさずに近寄って来る。
見た目はいつもと変わらない。
明るくして少し短くしてふんわりさせた髪、前よりハッキリしたメイク。
目元を強調している?
紺のブレザーに白いブラウスに赤いタイ、チェックのスカート。
しかし、制服の胸元は開き、スカートは信じられない位短い。
地味美人から明るい可愛いにシフトチェンジした、元カノ…そう、元カノ。
あんな酷い事を言われても、フラれても、他の男とヤッたって言われれも、子供の頃から知ってる、大好きと…いや、愛してるって思ってた、三島皐月その人。
何かの間違いで、嘘!とかドッキリ!とか言って欲しい…。
せめて、あんな別れかたでは無く、もう少しで良い、語り合う機会が欲しい…。
整った唇が開くのを見ている。
3月に初めて、生まれて初めてキスをした唇。
その唇を開き、出た言葉は、
『同じ時間に合わせて電車乗って来る?普通?
もう別れたんだから、遠慮して時間ズラしてよね?』
やっぱり夢じゃ無い。
俺を馬鹿にするように吐き捨てるように言う、皐月の姿だった。
(…本当に変わってしまったのだなぁ。)
そう思ってると、
クスクス笑いながら、
『昨日休んだでしょ?確認に行ったらそう聞いたよ。
もっとショック受けて今週位は来ないと思ったけど…。恥ずかしく無い?よく来れたね?』
恥ずかしいし、辛いし諸々の感情がある。
決して学校へ行きたい気分じゃ無いけどいつまでも逃げ回っているわけにも行かない。
俺は覚悟を持って学校へ行き、決別しなければならない。
目の前の元カノを思い出にしてしまう為に。
決意は固いけど、動揺してしまうし、その言葉の不快感に声は出ない。
『…。』
皐月は軽く腹を立て、
『また!そうやって!無表情に黙れば良いって思って!
いつも思ってた!女の子みたいな顔してるくせに口を開けば漢とかなんとか…ばっかみたい!くっさい事ばっか陰キャの親友と語りあってれば?』
蔑む表情を見て本当に皐月なのか自信が無くなってくる。
でも俺、劇で魔女役やらされる程度には女顔で、良くお母さんそっくりって言われる。そのコンプレックスを語ったのは皐月と親友の承だけ。
悲しくなってきた。なんでこんな関係になってしまったのか?
なんで?俺が何かしたのかな?
『…皐月、俺何かした?』
吃らないように、注意しながらいつもより僅かにゆっくり話す、
皐月はふふんと笑い、
『一昨日言った通りよ、
あんた程度の男はいくらでも居るし?
私は自分の価値を知ったの。
あんたじゃもう釣り合わないし、全然興味無い。
…ううん、よくもあんた程度の男が私の初キスを…!』
?!
キスした事後悔してるのか…?!
今は心が離れてしまったとしても、
それでもあの時は、あの瞬間はお互いに思い合い、触れ合って、唇を重ねた。心は繋がってた。
それだけは間違いない事。それすら、思い出すら否定するの…?
皐月の心無い言葉に覚悟してたけど目の前が真っ暗になる。
普段の癖で無表情、無口を保っているけど逃げ出したい。
皐月はちょっと悲しそうに、
『なによ、傷付かないの?
私が言っても何にも感じないの?
私を愛してるって言ってたのに?…もう愛してるって言ってくれ無いの…?』
前の皐月に戻ったような切ない表情にハッと我に帰り、小さく叫ぶように言う、
『あ、あ、愛してるさ!
傷つくよ!嘘だったら良いって一昨日からずずっと思ってるよ!』
本音だ、
それを聞いた皐月はニタァって笑いながら、
『キャハハははは!
きんもー!!愛してる!ってフラれて?NTRれた元カノに?!
笑っちゃう!かっこわる!
あはははははは!!』
駅のホームでゲラゲラ笑うと、ピタって笑いを止めて、吐き捨てるように、
『キモいから一緒の電車で来るな。
最後に話す機会を作ってやるから?感謝してよね?
今日夕方、うちの近くの、コンビニに来てよ。
それで終わりにしましょ?』
『…わかった。』
『…フった男が逆恨みして…なんて事件いくらでもあるから気をつけなくちゃ。
人目の有るところで会いましょう?』
恨まれる心当たりはあるんだな?
全部、ずーっと皐月のペースで話は終わった。
俺はとても同じ電車で行く気になれなかったから一本遅らせて次の電車でターミナル駅へ向かった。
胸は脈打ち、頭は痛いし、目がまわる。
動悸息切れなんでもござれ。
斉藤宏介、絶不調!
今日の放課後、会って話しをする事になった。
…いつか会って、話しをして自分の心に決着を付ける機会を!って思ってたけど、まさかこんなにすぐ近場で会って、こんな言われようとは思っていなかった…。放課後か。きっと綺麗な別れにならない気がする…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます