第7話「案外いいかも?」

「ちょ、瑠璃!お前まじふざけんな!」

「ざまぁw」

「おいまじで瑠璃許さねぇ!ってか敵来てるって!w」

「あーもう終わらせた。」

「え、Haru強すぎ...」

「瑠璃とは大違いだな!」

「うるせぇレイア。お前よりは強い。」

「あー瑠璃絶対許さない!!殴り飛ばすぞてめぇ!」


 笑い声、叫び声、様々な声が電波に流れる。コメント欄も、


『初配信で殴り合いするのおもろすぎww』

『AGLAR結構おもろい人多いけど孤高の戦士はトップ級で最高すぎw』

『Haruが強すぎて触れられてないけど瑠璃の※コールめっちゃうまくね?レイアの守りも強すぎるし。』


 と、とても賑わっている。


 ※コール・・・指示や声かけのこと


 最初に軽く自己紹介をして、そこから2時間ほどオンラインFPSゲームをしているのだが、流石人気事務所AGLARといったところか、同時視聴者数は2万人を上回っている。視聴者と喋ったり、人とゲームするのはとても久しぶりで、なんだか懐かしい気分になってくる。


「お、ナイス一位~!瑠璃もHaruも強すぎ~!」

「※ないふぁい。Haruが敵みんなボコしてたからね。」


 ※ナイスファイトの略(NFと書いたりもする)


「別に強くないよ、突っ込んだらなんか勝っただけ。」


「いやそれが強いんだよ。」


 僕の言葉にレイアと瑠璃は声をそろえてそう言う。一位も取ったし、キリのいい時間だったので、僕たちは最後に軽く喋り、流れで配信を閉じた。


 配信が終わると、和泉雪が自分のノートを見ながら声をだす。


「お疲れ様です、皆様。長時間の初配信だったのでゆっくり休んでください。タクシーや電車を使って家に帰る場合は領収書を私に渡してもらえば、経費で落ちます。この事務所は泊まることもできますので、ごゆっくりしていってください。明日はAGLAR所属の方々に挨拶がありますので、10時に集合です。」


 和泉さんは続けてテキパキと説明する。


「ここの設計図やAGLARについてなどは机に書いてある資料に全て記載してあります。それでは私はやらなければいけないことがあるので、失礼します。」


 そう言ってお辞儀をし、和泉さんは部屋を出た。


「雪さんってすっげー頼りになるタイプじゃん!」

「確かに。顔可愛いし仕事できてかっこいいかも…」


 レイアは目をキラキラさせながら言う。

 瑠璃も珍しく人のことを褒めていてちょっと驚いた。


「ってかみんなは家帰る?それとも泊まり?」


 レイアは椅子に座り、机に置いてある「AGLAR説明書」と書かれた資料を手に取る。


「私は泊まろうかな。家より環境いいし。」


 瑠璃もそう言って資料を取る。


「やっばゲーム部屋何個もあるぞ!大きいから小さいのまで!」

「ふーん、マッサージ機とかスキンケアグッズとかあるんだ…」


 まるで遠足に行く子供かのようにはしゃいでいる二人。


「Haruもこいよー!一緒に見ようぜ!」

「僕は全部見たから覚えてる。」

「Haru根暗陰キャだから」

「お前は一言余計だ。」


 僕はそう言いながら部屋を出た。


 明日はAGLARの先輩方に会える。少し憧れていた、AGLARのストリーマーたちに。

 ──情報入手には最高だ。


 そんなことを考えていながら歩いていると、突き当たりのT字の廊下で左から右へと人が通った。

 高身長で肩くらいある綺麗なピンクの髪、長いまつ毛に潤った唇。だれもが二度見するような、そんなオーラを放っている。

 彼女は歩きながら横目でこちらを見てそのまま通り去っていく。


 僕は数秒立ち止まり、彼女とは逆方向の左折をして宿泊専用の部屋へと向かった。





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