第5話「もしかして...」

 あの事件で花恋を刺した青年、「斎藤さいとう 正義まさよし」は捕まったが、俺は鬱になって配信活動をやめた。辛くて、苦しくて、いつまでもその青年を恨み、呪った。


 あの事件から、俺は回収した花恋のキーホルダーのついた個人用のスマホは警察に渡さずに持っている。俺がさんざん言ったから花恋はスマホを仕事用と個人用に分けていたため、俺が所持している。警察に渡した方が捜査などは早いかもしれない。

 でも、


 ――俺が自分自身で復讐するんだ。


 そんな気持ちが頭から離れない。


 四桁のロックを解除するのは案外簡単だった。


『0 5 1 6』


 相変わらず危機感ないよな、自分の誕生日にするなんて。

 そんなことを思いながらメールのやり取りやスマホの履歴を確認する。


 メールには特にこれといったものは見つからない。仲のいいアイドル仲間との楽しそうなメールくらいだ。

 検索履歴は....


【ストーカー 対処の仕方】

【ストーカー どうすればいい】

【悩み 誰にも相談できない】



「...は?」


 勿論驚きもあったが、何で伝えてくれなかったんだという少しの怒りが芽生えた。じゃああいつはずっとストーカーしてたってこと...?

 もし言ってくれれば、そんな叶わぬことを考え続ける。

 でも、それは一つの疑問に変わった。花恋を殺した斎藤正義とかいう男の反応や行動、花恋の言葉を思い出してみる。

 斎藤正義は昔からのファンで、握手会にもよく来ていたことも、花恋ファンの間では結構有名な人だったことも調べて知っている。そんな人が花恋本人を殺した...?

 どうも辻褄つじつまが合わない。しかも斎藤正義が放った言葉の「あれ」がずっと気になっている。嘘も何も、自分自身で殺意が沸いて、自分の手で殺しただけ。自分の中の話じゃないか。

 その瞬間に、少し嫌な予感がした。いやまさか...

 だとしたら辻褄があってくる。元々殺意の原因になったのは勘違いが原因だろう。つまり...


「犯人は他にいる...?」



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