第1章【染ま『タイトル』】
第4話「空白」
それは突然起こった出来事だった。
足音に気を取られ後ろを向くと、反射光に目がくらみ一秒ほど目を閉じる。
目を開けたときにはもう遅かった。
地面は赤く染まり、花恋の制服にも赤色ががにじみ出てくる。
花恋はその場で倒れ、黒いパーカーを来た男が立っていた。
――花恋はこの男に刺されたんだ。
そう思うと恐怖や
殴られて後ろにふらついた男はフードで目元が見えないが、気味悪く笑っている。
「あはは!じゃあなゴミアイドル!ファンを騙しやがって、クソみてーな嘘ついてアイドルやってんじゃねーよ!!」
「...は?花恋が騙した?」
俺はいつも以上に低い声で言葉を発する。
「ファンを騙して彼氏作っていちゃらぶしてんじゃねーよ!俺は全部知ってるからな!お前が嘘が大得意なことも、淫乱アイドルなことも全部!!」
「俺花恋と付き合ってねぇーし。裏でもちゃんと清楚だわ何勘違いしてんだおめぇ。」
「は?嘘つくんじゃねぇよ!ファンの名前一人も覚えてないくせに!!」
なんだこの矛盾。何勘違いしてんだこいつ。
この男が言葉を発するたびに、どんどん怒りがこみあげてくる。
「...よし...まさよし...」
花恋はか弱い声で名前のようなものを発する。
「...は?」
男の気味の悪い笑い顔はどんどん崩壊していく。
「私...知ってる...何回か握手...会...来てくれたよね...?」
「う、嘘つけ!」
「...まさよしくん...確かお守りくれたよね...?私が初めてやった握手会で...」
「は...何で知って...」
男の声はどんどん小さくなる。
「ごめんね...私は...頑張ったんだけど...」
花恋の顔は明らかに作り笑顔だった。
「じゃ、じゃあ..あれは嘘...?」
何かを察して急に顔が真っ青になり、叫びながら走ってその場を立ち去る。
僕は我に返り、すぐに倒れた花恋の横に行き、
「大丈夫か!?」
と声をかける。花恋は今にも消えそうな声で何かを言っている。
「...なきゃ...いわなきゃ...」
僕はヘットフォンで音を聞きすぎて少し聞こえずらくなった耳を精一杯澄まして聞き取る。
「なんだ!ゆっくりでいい!」
僕はパニック状態になっていていつもより声が大きくなる。
「あの...その...私は...」
言いかけたその言葉をかき消すように救急車のサイレンが近づいてくる。救急車は目の前で止まり、救急隊員が僕たちに声をかける。
「大丈夫ですか!?」
僕はパニックすぎてうまく説明できないが、流石は救急隊員。状況をすぐ理解してすぐさま対応する。僕はずっと戸惑ったまま、時間だけが過ぎていった。
結果を言うと、朝凪花恋はその日の夜に息を引き取った。
僕は次の日の朝に知り、すぐさま病院に行った。ベットには冷たくなった花恋が日光に当たり、美しさをまとっている。
僕は花恋の手をそっと握り、静かに涙を流した。
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