第2話「幼馴染は配信者」

「学校疲れたぁー!ってか晴今日社会の教科書忘れたでしょ!」

「...バレてた?」

「せっかく貸してたのに今日授業あったから私が忘れたみたいになっちゃったじゃん!」

「...いつも忘れてるだろ」

「ん?なぁに?なんか言った???」

「すみませんでしたほんとに。」


 賑やかな下校。晴は相変わらず大人びてて落ち着いている。いつも冷たい態度だが、これが晴にとって通常運転で決して怒ってるわけではないのを私は知っている。でも学校ではあまり人と喋っているところはみたことが無い。ずっとスマホをいじっていて、多分配信関連のお仕事の連絡などをやっている。

 そんな晴にも可愛いところはある。

 ゲームになるとすっごく負けず嫌いなところ、配信で見せる無邪気な笑顔、この間も欲しかった黒のヘッドホンをプレゼントした時の嬉しさ隠しきれてないあの顔は可愛かったな。...ちょっと高かったけど。

 晴は「Haru」という名前で配信をしているけど、ものすごく人気。高校でも話題になってはいるものの、誰も晴だとは思わないんだよな~。多分晴が話さな過ぎてるだけだけど。


「ってかバック重すぎ~!なんでこんなに教科書あるのー!」

「ん。」


 特にこれといった意味はないがなんとなく思ったことを言ってみると、晴は右手を私の方に差し出してきた。


「え?」


 少し戸惑ったが、晴は私の持っていたバックを何も言わずに取り、左手に持ち替える。

 ほんと、さらっとそんなことしちゃうんだから。イケメンめ。

 私は少し照れながらジト目で晴を見る。


 私はひそかに恋をしている。晴が好き。


 そんな気持ちを隠しながら、今日も日常的な会話が続いていく。


「あ、そーいえば今日新しいカフェができたの!!今から行かない?」

「え、今?」


 晴は少し嫌そうな顔をして私を見る。


「お願い!!二人以上でいくとクマのぬいぐるみ貰えるんだけどめっちゃ可愛くて!!頼むぅ!!」

「もーしょうがないな。すぐ帰るからな。」

「やったぁ!ありがとっ!」


 私はルンルンで晴の手を取り、少し駆け足で進む。


「ちょ、早いって。」


 少し困り顔の君、低い声で晴はそう言う。


「早くいかないとなくなっちゃうかもだもん!」


 私は笑顔で晴の方を向く。

 ――クマのぬいぐるみよりも、君が欲しいなんて言えないまま。

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