僕のタイトル

のえたそ

第0章【輝く道】

第1話「幼馴染はアイドル」

「じゃあそろそろ学校だからここら辺でやめるわ~またね~」


 そう言った後、俺はパソコンに表示されている配信終了ボタンを押して学校に行く準備を始めた。

 制服に着替え、中身を確認してからバックを背負い、ゼリー飲料片手に靴を履いて家を出る。外の眩しさに少し目がくらみ、なんとなく手を陽にかざしてみる。

 目が光に慣れてきたとき目の前にはなんだか懐かしいやつが立っている。


「はるー!久墨くすみ はるー!おはよ!久しぶり~!」

「ん。久しぶり。」


 彼女は「朝凪あさなぎ 花恋かれん」。いつも通りの明るい笑顔と元気な声で肩を組んでくる。全く、もう高校生だっていうのに昔から変わらずボディータッチが多い。高校生なんだからちょっとは気にするだろこっちも。


「まだ主食ゼリー飲料なのー?え、ってかそれ新作じゃん!」

「うん。最近出たやつ。」

「えーちょっとちょーだい!」


 花恋は俺が飲んでいたゼリー飲料を右手で奪い、「ちゅー」っと一口だけ口に含んで僕に押し付ける。


「え、桃味だ!おいし~!!」

「ちょ、おまっ...」

「ん?」


 僕は少し頬を赤らめて花恋とは真逆の方向を向く。ほんとにこいつは...危なっかしいというか、危機感がないというか...

 いくら幼馴染とはいえ、一応高校一年生だ。ちょっとは気にするっていうの。


俺はひそかに恋をしている。花恋が好きだ。


「そーいえば夏休み中は配信忙しそうだったけど大丈夫だった?コラボとか、FPS?ゲームの大会があったでしょ?私あんまゲーム詳しくないからよくわかんなかったけど。」

「うん。練習とか打ち合わせとかまぁまぁ忙しかったけど楽しかったよ。そっちこそライブあったでしょ。結構忙しそうだったじゃん。」

「そー!めっちゃ忙しかった!でもめっちゃ楽しかったよ!晴も来てくれたし頑張っちゃった!」


 夏休みも忙しかったのに、夏休み明けも元気だなぁ、なんて思いながら楽しそうに話す花恋を見る。高校初めての夏休みはお互いすごく忙しかった。初めて今年の四月に配信者を始めて約5カ月。人脈の多い先輩の配信者や運もあり、僕は今30万人を突破した。自分でも急すぎて未だに驚いている。

 ゲームが得意というので男性から人気と、この低い声が女性に刺さったらしく、歌を投稿してから結構伸びた。うれしい限りだ。


「また高校はじまるんだね~。夏休みにアイドル活動ばっかだったからなんか実感わかないね。ちょっとめんどくさーい...」


 花恋はちょっと気だるそうにそう言う。

 花恋は地下アイドル「ANIMALS(アニマルズ)」でアイドル活動をやっていて、メンバーの誰よりも人気がある。容姿端麗で清楚系だがちょっぴり抜けているところや、絵がうまいところ、ちょっぴりあざといところが大人気。今では一人でアイドルの頂点に上り詰めようとしているくらいだ。ほんとすごいな。


「そうだね。」


 お互いに夏休みは忙しかったから、二学期はとことん楽しもう。そう決意しながら、俺と花恋は高校へ向かった。

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