第十四話 突起がたくさん生えたモノで身体を貫かれる

 使用人に対していくらいじめや折檻をしても叱責される事はないが、伯爵家では死人が出る事は許されなかった。

 いじめや折檻が嫌ならば辞めればよく、それは常々、使用人達に言い聞かせていた。

 特に引き留めもしないし、口止めのために退職金も余分に払うのが常だった。

 もし口外した時の報復の方が恐ろしく、誰も伯爵家の実体を世間に晒す事はなかった。

 金持ちの貴族の階級意識、我が儘や横柄、傲慢な態度は多少どこの家でもある事だ。

 ヘンデル伯爵家は快楽や嗜好を楽しむのが一番で、その時間が他の煩わしい事で奪われるのをもっとも嫌った。

 だから子供達の諍いやらには無関心だし、その為の事件で自分の時間を取られるのを一番嫌がった。

 使用人の交換は執事長で済むが、死人が出るとなるとその報告がヘンデル伯爵まで行くのは普通でそうなると子供達は酷く怒られる。手間をかけさせた事とそれを怒る時間まで取らされた事を伯爵は怒る。死人が出た事実よりもそれを処理する手間を惜しみ、それはねちねちと長い間嫌味にして言われるのを子供達は知っていた。


 だから子供達も酷いいじめはしても死人が出る事だけは禁忌としていた。

 善悪ではなく、ヘンデル伯爵に怒られるのを防ぐ為だった。


 数日前にソフィアを溺死させた時も怒られる事を厭い、ソフィアが息を吹き返した事で彼らは安堵したのだった。

 だから、メアリは虫の息でピクピクとなっているが、死なせない寸前でナタリーは棍棒を振るのを止めた。


「ああ、疲れた」

 ナタリーはぽいっと棍棒を床に投げ捨て、

「メアリ、片付けなさい」

 と今、目の前で血肉を晒して動けないメアリに言った。

 

 マイアはローガンの後ろでそれを見ていたが、

「ローガン様、こいつ食ってもいいか?」 

 と言った。


「駄目よ」

 とまたその背後から声がして、ローガンとマイアが振り返った。

 いつのまにかソフィアが壁際に立っていた。 

 マイアは一瞬、睨むような目をしたがすぐに逸らして、うつむいた。

「少ない使用人を減らしちゃいけないわ。ローガン兄様、その子も回復してやってよ。ナタリー姉様、その子、いらないなら私のメイドにしていいかしら?」

 ソフィアがそう言うと、ナタリーは目を剥いた。


「ソフィア! 私の部屋に誰が入っていいと言ったの! ローガン! マイア! その女を!」

 とナタリーは言ったが、二人がすでに自分の味方ではないと気付いていた。

「ローガン、どういう事なの? どうしてソフィアを? 何があったの!」


「お前、うるせえ。臭い息でがあがあしゃべるな」

 とソフィアが言った。

「な、なんですって」

「何だよ、その格好、ローガン呼ぶのに、スケスケのネグリジェ着ちゃってさぁ。デブい身体丸見えじゃん。誘ってんの? まあ、ローガンは中身はともかく、イケメンだからな。何、抱いて欲しいとか思っちゃってんの? ローガン、抱いてやんなよ」

 とソフィアが言った。

 よく言えば豊満な肉体だが、運動不足と自堕落な階級生活でたいていの貴族は太り気味だった。男は乗馬、狩り、剣の鍛錬などで身体を動かすが、女は刺繍に俳句、女は外に出ないのが美徳でもあるので女性の方が肥満気味だった。逆に言えば、ほっそりとしたソフィアの様な身体は満足に食事が出来ていない証拠でもある。

「な!」

 ナタリーの顔が真っ赤になった。

「身体はいりませんけど、私はあの女の脳が欲しいです」

 とローガンが言った。

「あ、なら、身体食いたい!」

 とマイアも言った。

「はあ? 何回言わせんだ。食うなつってんじゃん!」

「ではどのように」

 と言われてソフィアは考えた。

「復讐ってのはさ、やられた事への仕返しだよ。でも殺されたけど相手を殺してそれで気が治まるかって言うとそうじゃないじゃん? こっちが死ぬまでのいろいろあったじゃん。それに比べてこいつらの死なんて一瞬だろ? なんで殺されるかも分かってない。ソフィアはさ、生まれたからこっちずっと虐めにあってきたわけ。それも家でも学院でも。それを考えると、まだこの女は死なせない」

 それからソフィアはローガンの側に寄って耳打ちをしてニヤッと笑いながら部屋を出て行った。

「まじか」

 とローガンは顔をしかめてから、

「マイア、メアリも連れてってお前の友達にしてやりな」

 と言いつけた。

 マイアが息絶え絶えのメアリを担いで部屋を出て行くと、ローガンはナタリーを見て優しく微笑んだ。

「ナタリー」

「な、何よ。あんた達、一体、何なの?」

「俺に抱いてほしいんだ?」

「ち、近寄らないで! ローガン!」

 一歩づつ歩を進めるローガンにナタリーは後ずさっていったが、すぐにベッドまで追い詰められそしてひっくり返った。

 あわてて起き上がろうとするナタリーをローガンがシャツを脱ぎながら押し倒した。

「ローガン! 止めて!」

 とナタリーは両手でローガンの身体を押し返そうとしたが、華奢に見えたローガンだが思うよりも力が強く、ナタリーの力では身動き出来なかった。

「ナタリー、君は自分で思ってるよりも可愛いよ」

 とローガンが耳元で囁いた。

「ローガン……」

 ナタリーは頭脳明晰で成績優秀だが、ルックスには自信がなかった。

 姉のケイトは母親に似て美しく、長兄のマルクとナタリーは父親に似て太った不細工だった。

「そんな事……ないわ……知ってるもの」

「他人の目がなんだって言うんだ?」

 そう言ってローガンがナタリーの頬にキスをして、そしてそのまま唇を奪った。

「ローガン!」

 ナタリーはローガンの背中に腕を回ししがみついた。

 ローガンの手がナタリーの身体をまさぐる。

 胸や太ももを優しく揉みしだき、そして薄いネグリジェを剥いだ。

 ナタリーは自分の太ももあたりに硬く太い物が当たるのを感じ、ついにローガンと結ばれる、と感動した。

 金髪碧眼のローガンは美しく、学院中で人気者だった。女子も男子も、教授達ですらその天使のような美しさに夢中になる。中身はソフィアをいたぶって遊んでいたクズだが、それも一部の仲間の前だけで外では見せない。いつも賢く立ち回り、この屋敷の中でも実の息子のマルクよりもヘンデル伯爵の受けが良かった。

「ナタリー、目を瞑っていた方がいい。怖いかもしれない」

「いいえ! ローガン、あなたとの初めてですもの。あなたの美しい顔が私の身体で官能に歪むのを目に焼き付けたいわ!」 

「そう?」

「ええ! ローガン、愛してるの!」


 ナタリーは自分の股間に押しつけられる硬いものを感じていっそうローガンの背中を抱き締める手に力を入れた。


 メリメリ、という音が聞こえてきたと同時にナタリーは身体の中で最も感じる部分に強烈な痛みを感じた。

「痛っ、痛いわ! ローガン! ぎゃーーーーーーーーーーー!」

 

 ナタリーの上には身体中にトゲトゲが生えたローガンがいた。

 美しい顔もその肢体にも、黒いトゲがたくさん生え、抱き合うナタリーの身体を傷つけた。だがナタリーはそんな傷を気にしている暇はなかった。

 ナタリーの股間を貫いたモノにもトゲがたくさん生えており、それは無防備なナタリーの中を酷く傷つけたからだ。

 ナタリーが泣いて暴れてもローガンはその動きを止めようとしなかった。

「や、やへて……いたい……いちゃい…わ……らすけて……ろーが……」


 ナタリーの身体中は傷ついて血だらけ、そして両足の間には赤黒い血だまりが出来ていた。人間とは違うローガンのモノはナタリーの股間から入り込み、彼女の口から飛び出した。トゲトゲのモノでかき回されたナタリーの体内はぐちゃぐちゃになっていた。


「ソフィアを殺した罰だ。あの子は妖魔の俺にも優しくしてくれたんだ。妖魔がみんな悪なんて誰が決めたんだ? 俺達は人間とは別に穏やかに暮らしていただけなのに。勇者とかがやってきて、好き勝手にみんなを殺していく。仲間とはぐれた俺にソフィアは優しかった。今のソフィアはソフィアじゃないけど、ソフィアの仇をとってくれるいい人間だ。お前はソフィアを虐めて殺した。今のソフィアはお前を殺すなと言うけど……俺はお前を殺す」

 すぐに命の火が消えそうなナタリーだが、ローガンはナタリーがこときれるまで、ナタリーの中でぐちょぐちょと動いていた。

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