男性の恋愛・女性の恋愛

@nikaidou365

第1話

男性の恋愛は個別保存、女性の恋愛は上書き保存とよく言われる。どういう意味かというと、男性は元彼女のことの記憶を1つ1つ大切に記憶し、彼女が新しく出来たとしても元彼女との記憶は忘れない(基本的にはね)

一方、女性は元彼氏の記憶は、新しく彼氏ができると、元彼氏の記憶はそれほど残らない。友人に戻りたい、なんて女性からいうこともあるかもしれないが、そこから新しい彼氏ができてしまえば、復縁、友人関係すら保つことすら難しいかもしれない。(まあ、女性については、自分は男性であるので深くはわからないがだいだいこんな感じだろう)





 少し前に彼女の佐野若葉と別れた。4年ほどの付き合いだった。高校から大学の移り変わりで別れるカップルは多かったが、同じ大学に入学したため、大学1年生までは、仲良くやっていた。カップルだから同じ大学に行こう、という考えなしのカップルではなく、それぞれ行きたい学部が同じ大学にあったことでたまたま同じ大学になったのだ。

 別れた理由としてはただ1つ、これからこのまま付き合っていくと結婚が視野に入るということで、結婚まではどうかなということで、彼女から切り出してきた。考えるのが早すぎると思うかもしれないが、大学生とは先のことを考えてしまう時期なのだ。就職のこと、結婚のこと、老後など、時間が十分にあるためそのようなことをうっすら考えてしまう年ごろなのかもしれない。

 大学生は人生の夏休みといわれるほど、時間はあるので自分を見つめ直すいい機会だと思い1人の時間が欲しかった自分にはちょうどいいと考え、別れる提案を呑んだ。彼女は「私を結婚まで連れていってくれるならこのまま付き合おうよ」といったが、自分は彼女を結婚まで導けるか自信が微塵ほどなかったため、断った。この時の彼女の寂しそうな顔を忘れられない。



 最初の2、3カ月は、楽しかった。楽しかったというのは、彼女との関係が邪魔だったとかではなく、単純に自分の時間がたくさんあり、本を読んだり、友人と遊んだり、バイトをたくさんしたりと自分のしたいことを沢山することが出来た。


 最初の2、3カ月というのだから、その後は言うまでもないだろう。後悔したのだ。夜のSNSでの会話や電話、休日でのデート、様々なことが懐かしく、昔に戻りたくなる。もし過去に戻る機械があるのなら迷わずその機械を使って、あの別れ話を拒否するだろう。

 彼女の声・表情・体温すべてが懐かしく、考えるだけで胸が苦しくなる。自分は彼女が出来たのは、佐野若葉が初めてで、別れることも初めてだった。こんなにも辛いとは知らなかった。夜にベッドの上で目を瞑ると彼女との思い出が頭の中で台風のように巡り巡る。

 遊園地で彼女と手をつないで楽しんだこと、受験勉強を互いの家に行って励ましあいながら乗り切ったこと、大学の授業をお互いにサボって遊びに行ったことすべてが昨日のように感じられる。そして目を開けるとそれらの記憶が突風のように流され、無と暗闇だけが残る。

 耐えられなかった。耐えられるわけがない。そうだ、復縁しよう。復縁さえすればすべてが解決する。そう思った瞬間すべてが復縁に向かうような方向で行くしか考えられなくなった。なぜなら、彼女がいなければ自分の世界すべてが黒色のようになんの意味もないものだと感じられたからだ。

 そう考えた後は一瞬であった。佐野若葉に復縁を要求した。今まで彼女がいない間に感じた気持ちをすべてぶつけた。今思えば、自分でも気持ち悪いことを言っていたかもしれない。しかし、関係なかった。彼女と復縁したいその一心だったから、他のことなど考えられなかった。

 結果は驚くほど上手くいった。復縁の話は成功。佐野若葉は再度自分の彼女となったのだ。自分の世界に先ほどまでの黒一色から鮮やかな色が戻る。やはり、自分には、彼女が必要だ。彼女をもう離さない。そう自分に誓った。彼女の顔も微笑んだように見えた。



 僕は若葉を大切にしたい。若葉を傷つける奴は絶対に許さない。若葉が大学の知り合いに悪口を言われたことがあった。僕はその知り合いを探し、若葉に悪口を言ったことを謝らせた。少々やりすぎたと思ったが、若葉は僕に2人きりの時、「ありがとう、うれしかった」と言ってくれた。若葉の笑顔が見られるだけで僕は何でもできそうな気分になる。言い過ぎかもしれないが、僕はそれほど若葉を愛している。大学生なのだから十分に時間はある。なので、ゆっくりと若葉との思い出を作っていこう。そう決めたのだ。


 若葉の様子が最近おかしい、聞くところによると、最近1人で帰っていると後ろからついてきたり、電話が鳴ったりするらしい。ストーカーというものだろうか、僕はそのようなことを聞き、怒りと同時に何とかしなければという気持ちになった。その後からというもの自分は訳のわからない気持ち悪い奴をどうにかするために、彼女を守るため一緒に家に帰ったり、家に帰った後も電話をして、大丈夫かどうか確認したりした。彼女は終始おびえていた。それはそうだ、ストーカーというのは怖いと聞く。(自分はされたことがないのでわからないが)なぜストーカーの奴はそんなことをするのか、彼女を怖がらせて何が楽しいのか、本当に許せない。一刻も早くどうにかしなければ…。


 ようやく、ストーカー犯が姿を現した。ストーカーというものはやはり夜に出るものだな、と思った。彼女の後ろにいるのを見て、自分は怒りがこみ上げてくる。彼女を苦しめる奴が許せない。自分はポケットから刃渡り9㎝ほどのナイフを取り出し、ストーカー犯に突撃していく。柔らかい感触。サクッという音が聞こえる。赤い液体がストーカー犯からにじみ出る。ストーカー犯の口からも赤い液体が出てくる。彼女は叫ぶ。しょうがない、目の前でこんな光景を見たらそのような反応になるだろう。しかし、それも自分がゆっくり彼女をケアすればいい。そう思っている。



 次のニュースです。先日、大学生の安藤陽介19歳が大学生の青井修平さん19歳を刃物で刺し、意識不明の重体です。青年はストーカーから守ったとの供述をしていますが。交際相手は、既に別れており、青年からストーカー被害を受けていたとのことから、警察は、交際トラブルによって犯行に及んだとみて調査を続けています。

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