キンセンカの唄時点までのキャラクター紹介

牡丹菊花

 本作の主人公。異世界で肉体を失い、定まった実体が存在しない。

 意識だけが特異な魔力の波長として存在している幽霊じみた状態。『身体が無いと動きにくい』という理由で仮想の肉体を魔力で形成し、ホログラムの要領で常に実体化させている。

 ただし実際にこれを認識できるのは彼が意図的に見えるようにしている時、同じ意識と波長のみの存在、あるいは先天的に特異な五感を有している人間の三択となる。

 自身が魔力というエネルギーとその波長であることを利用して電子機器や人体へハッキングを仕掛け、情報共有や五感妨害といったサポートや直接攻撃を加えることができる。


 2年間の異世界転移の期間の経験から、あらゆることに対して諦観気味の性格。

 異世界で心の支えだった友人二人を謀略で失ったうえに徹底して国ぐるみで虐げられ、最低限の生活すらままならないままの状態で異世界そのものへの憎悪を貯め続けた。

 最終的に彼が力を手に入れた際には炸裂した悪意のままにクラスメイト諸共国一つを手に掛けており、果てには異世界が文字通り終わる一歩手前まで追い詰めている。

 紆余曲折あってクラスメイトとの仲はそれなりに良好だが、諸々の事情で強い引け目を感じているため直に連絡を取ろうとはしなかった。

 肉体を取り戻す手段はクラスメイトが保有しており、また提案されたもののそれを拒否し高校には復学せず中退。

 連絡こそ時折取りあっているが所在を明かそうとはしていない。


 中学生の時点で家庭環境が崩壊しており、転移直前には無理心中にも近い形で肉親を失っている。ただでさえ精神的に不安定だったところにストレスが重なり続け、異世界では常にメンタルが崩壊寸前だった。

 現在ではクラスメイト達との和解や地球で出会った同族との交流を通して少しずつ復調している。


 カレンを気にかけていたのは始まりに関しては本当に気まぐれ。その後は彼氏がいるという状況を亡くした友人たちカップルと重ねてしまい、放っておくことができなくなった。

「キンセンカの唄」後にはカレンと彼女のボーイフレンドを元クラスメイト達の下へ留学という形で送り込んでいる。


 最近クラスメイトの一人と連絡を取り、異世界へ戻る準備を進めている。



カレン・リエーナ

 西欧の富裕層の一人娘。とある爆発事故に巻き込まれた際に肉体を失うと同時に菊花と酷似した状態となった。

 明確な自我ある幽霊という存在になってしまった娘と、肉体を失った後に出会い、想いを交わした彼氏トム。彼らに愛されながらも、誰に見られているかもわからない中で彼らが『普通』であるためにも表立って触れ合うことはままならず、交わされるのは大半がチャットでの会話のみ。結果としてカレンは孤独を感じてしまっていた。


 久々の家族旅行に『憑いていく』形で日本を訪れるも、「帰ればまた寂しい日々が待っている」という現実に嫌気が差し衝動的に脱走。連絡手段を無意識に完全遮断し、観光地から地方のド田舎までの大遠征を敢行した。


 菊花に色々と便宜を図ってもらったことには感謝しており、友達として関係を続けていきたいと思うくらいには気に入っている。


 本編後には菊花に頼んで彼の元同級生たちの下へ彼氏諸共送り込まれており、菊花から習った魔力操縦による特異なプログラム技術を自主的に鍛えるほか、仮の肉体を用意して貰えたことで念願の学生生活を送るなどでのびのびと過ごしている。


 菊花の「醜さ」、すなわち異世界での所業については自主的に情報を遮断しており、実際に菊花自身から聞くまでは情報を仕入れないと決めている。


 両親は身体を取り戻したことに歓喜するも、娘の一人暮らし(彼氏と同棲)に対し期待すればいいやら心配すればいいやらでやきもきしている。時折菊花へメールが届き「勝手にさせとけばいいんじゃないですかね」と雑に返されている。



・トム・ビショップ

 カレンのボーイフレンド。交際歴2年。

 いわゆる『魔法使い』の家系であり、カレンや菊花のような、あるいはその亜種ともいえる幽霊・精霊の類を視認する力を持っている。

 「キンセンカの唄」本編での出番はほとんど無かったが、「自分では彼女の状態について理解が及ばないから、友人ができたことは嬉しい」と心の底から菊花へ言葉を投げかける漢。カレン一筋であり、歯の浮くような甘いセリフだって彼女のためならいくらでも吐ける。多分イタリア人あたりの血が入っている。


 この世界においては地球にも魔力を用いて魔法を扱える『魔法使い』がいるが、組織を作ることもできない程度の数しかいない。

 地球で異世界由来の魔法が使える菊花のクラスメイト達は魔法使い的に見ると「同胞に限りなく近い亜種」といった感覚であり、一般人との間に疎外感を感じていた彼にとっても留学は渡りに船だった。



・吉田恭介

 菊花の元クラスメイト。通称「非モテの金髪な方」。うるさいしがっつき過ぎなのでモテない。

 菊花が手に掛けたクラスメイトの友人であったが、現在は和解済み。異世界人側が情報封鎖を行っていたとはいえ菊花の苦境に気付かなかったことを悔やんでいる。


 異世界で「微細波長パルス」の魔法を手に入れており、自在に膜状の防壁を張る文字通りの壁役をこなした。


 ちなみに金髪は地毛。クオーターであり、髪色だけ祖父のそれが遺伝した。

 


・金井正道

 菊花の元クラスメイト。通称「非モテの黒髪な方」。うるさいしがっつき過ぎなのでモテない。

 菊花とはただの同級生であり、友達ですらなかった。そのため最後の最後で異世界を滅ぼそうとしたことに憤りもしたが、事情を聴くと同時「自分も菊花カレを知ろうとしなかった」と思い至り和解している。


 異世界で「火炎放射」の魔法を手に入れており、高熱と広範囲の射程を活かした妨害や攪乱といった方向の使い方を磨いた。


 黒髪を肩口まで伸ばしてうなじあたりで縛っている。黙っていればイケメンなのだが喋るとボロが出まくる。



・斎藤美弥

 菊花の元クラスメイト。異世界で友人を失ったストレスで髪が白くなってしまった。

 菊花とはただの同級生であり、友達ですらなかったどころか逆に友人を殺されている。このことからかなり関係は悪かったが、彼の身の上を聞くにつれて「本当に一方的に恨むだけでいいのか」と疑問が沸き、「クラスメイトとして仲直りこそしたが過去の所業を許したわけではない」という立場を保っている。


 異世界で「電磁鞭」の魔法を手に入れており、名前通り鞭のように使うことによる中距離の戦闘を習得している。


 彼氏募集中。だがことあるごとに悪い男を引っかけては股間に鞭をブチ当てる日々。

 先日返り血をつけたまま登校し物議を醸した。被害者はわいせつ行為常習犯であった。



・竜胆 柚子

 菊花の元クラスメイト。名前でよく間違われるが男。

 菊花の事情に対して敢えて「興味がない」というスタンスを貫いており、魔力で動く人型兵器の設計に腐心。その過程で様々な素材を開発・収集し、カレンの器の設計や菊花が異世界へ向かう際の機体構築に手を貸した。


 魔法を手に入れることはなかったが、異世界由来の魔力を用いた機械技術を吸収し独自の兵器群を保有している。

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