第4話 イイこと、しよ?
「ねえ、きみ、かわうぃーね!」
「ちょっとお兄ちゃんたちとイイことしない?」
ギャル二人とみなっちの前に、浅黒い肌をした男二人が現れた。
一人は金髪、一人は坊主頭だ。
「え、ええと……」
ちぢこまり、困惑するみなっち。
「あらお兄さんたち。アタシらもいるんだけど?」
そんなみなっちをかばうように、ギャル二人が前に出た。
「僕はそこのピンクの君に用があるの! 君たちはお呼びではないよ」
「そうだそうだ!」
チャラ男たちはギャル二人を無視してみなっちに呼びかけようとするが――
「あらあら。アタシらは彼女のマネージャーなのよ」
「みなっちに用があるんなら、私たちをちゃんと通してくれるかしら?」
ギャルたちが、がっちりとみなっちを守る。
「ちっ、仕方ねえな……どうやったら通してくれるんだよ?」
「ふふふ。まずはアタシたち二人と……イイこと、しましょ?」
明るめの茶髪をしたギャルその1が、どこからともなく取り出したビーチボールを「ばん!」と両手で叩きながら言った。
言うや否や、彼女らは砂浜のバレーコートへ移動した。
どうやらビーチバレーで勝負しようということらしい。
そのころ、北風と太陽は。
「おい、北風よ。我は美女たちがたわむれる様子を見たいのだ。むさくるしいチャラ男などいらん!」
「みなまで言うな! 分かってるって」
しばし見守っていたが、すでに我慢の限界の様子。
勝負を始めようとするギャルとチャラ男たちを横目に、何やらたくらみだした。
神々の
「先に10ポイント取った方が勝ち。サーブの初手はアンタたちにゆずってあげる」
「ふん、ハンデ無しで良いのかい?」
「それはこっちのセリフよ」
「じゃあ、俺のサーブから行かせてもらうぜ。――おらッ!」
約10分後。
「ま、負けた……」
「完敗だ……」
チャラ男たちは1ポイントも取ることなく、ギャル二人が勝利した。
北風がギャル二人に有利になるように風を吹かせたのである。
「すげえ、あの子たち超つえー!」
「可愛くてかっこいい!」
いつの間にか集まっていた観衆から歓声があがっている。
実はギャル二人はバレー部で、水着で華麗に躍動する姿が、多くの者をとりこにしたのだ。
「やば、なんか注目集めちゃったね」
「それな~。つーか、なんか風向きが良すぎたような……? ま、いっか!」
ちょっと照れくさそうなギャルたちに、チャラ男たちは申し訳なさそうに歩み寄る。
「君たち、強いんだね」
「ごめんな、急に失礼な絡み方して」
「いいってことよ!」
「案外、楽しかったわ」
固い握手を交わす彼女らへ、観衆から大きな拍手が送られた。
「そういや、みなっちは?」
「勝負中に海に飛んでったボールを取りに行って……あっ!?」
赤い髪のギャルその2が海の方を見ると、視線の先にみなっちを見つけた。
「大変! あんなところに!」
彼らはギャルその2が指さした方角を見つめる。
砂浜から遠く離れた海面に、みなっちは居た。
ビーチボールに捕まり、顔だけを海面から出してぷかぷかと波に揺られている。
それを見た北風と太陽はというと。
「おい、北風! 貴様がギャルどもの尻をまじまじと眺めている間に、みなっちが沖の方に行ってしまったではないか!」
「はあ!? お前こそ胸の谷間に気をとられてただろ!」
監督不行き届きの責任を押し付け合っていた。
その頃、みなっちは。
「どうしよう、水着、外れちゃった……」
胸を覆っていた水着が、泳いでいる間にどこかへ流されてしまっていた。
今、身につけているのは、下の水着のみ。面積の少ない布きれ一枚である。
「このままじゃ砂浜に戻れないよ。とりあえず、しばらくここでサナエとヒナコが何とかしてくれるのを待ってようかな……って、え?」
みなっちは周りを見ると、青ざめた。
ボールに捕まりぷかぷかと浮かぶ彼女の周りには、サメの背びれのようなものが、いくつか海面から突き出ている。
「や、やだ、怖いよ。誰か、助けて!!」
彼女の悲鳴が聞こえたのか、北風と太陽は再びみなっちに視線を向けた。
「おい、太陽!」
「おお!? 我がみなっちが……みなっちのみなっちが、ついに露わに!!」
海面下のみなっちの上半身を凝視した太陽は大興奮していた。
そんなアツアツの太陽をさますように、北風が。
「今は違うだろ!!」
冷たい風を吹かせるかのごとくツッコんだ。
我に返った太陽が、みなっちのピンチに気付く。
「サメに囲まれているではないか!」
「そうだよ。はやく助けるぞ!」
「サメどもめ。我らが力を見せつけてやる!」
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