クズその31【招かざる来訪者】
「……おお、めちゃめちゃいっぱいあるじゃんか」
ロリ系から清楚系、ギャル系に熟女系。更には外人系に至るまで選り取り見取りだ。
俺はコスプレ衣装が散乱する部屋の中で、夢中になって女の子リストを検索した。ランジェリー姿で。
「……お。この子、どことなくすーちゃんに似てるかも。よし、じゃあこの子に決め……」
ピーンポーン♪
「おわっ! え? え?」
突如鳴り響いたインターホン。完全に不意討ちを食らった俺の心拍数が爆上がりした。
「……誰だ? まだ指名してないし、してたとしても早すぎだろ。それに、ネット通販もウーバーイーツも頼んでないけど?」
ピーンポーン♪ ピーンポーン♪ ピーンポーン♪ ピーンポーン♪ ピーンポーン♪ ピーンポーン♪ ピピピピピピピピピピーンポーン♪ ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピーンポーン♪
ちょ! 怖い怖い! 何このサイコパスピンポン連打!?
「おねーちゃあ~ん」
……は?
ウォークインクローゼットのドアをそっと開けて、遠目からモニターに映る人物を確認した。
「……縁ちゃん?」
来訪者は妹の縁ちゃんだった。
おいおい、こんな状態の時に来るなんてツイてない。確か退院の時以来だったか? 移ちゃんとは真逆のタイプで、可愛かったからじっくり話してみたかったのに、残念だ。
──そう、今日という日は俺にとって特別な日。申し訳ないけど、このまま居留守モードでスルーさせてもらうよ。まぁ姉妹だし、またいつでも会えるよね。ご足労の所、申し訳な──
──ガチャン
は? ガチャン?
鍵が開いた音を察知したと同時に、俺はウォークインクローゼットのドアを閉めた。
え? え? え? ま、まさか合鍵……あいくぁぎぃぃいいい──?
「おねーちゃ~ん、あれ? 居ないの?」
縁ちゃんが合鍵を使用して部屋に入ってきたみたいだ。おいおいおい……! めちゃくちゃヤバいじゃんこの状況! もしも見つかったら確実に通報されるぞ。どうやって逃げたら……。
ウォークインクローゼット内には換気用の天窓が一つだけ。しかし、大人が出られるようなサイズではないし、そもそもここはタワーマンションの三十階だ。
となると、脱出経路は玄関のみ……でも、どうやって玄関から? このドアを開けた瞬間に見つかるし、ウォークインクローゼット内には隠れてやり過ごす場所も無い。つまり八方塞がり……絶体絶命ってやつか?
「おねーちゃあーん! トイレ~?」
……マズイ。マズイぞこれは。このドアを開けられるのも時間の問題だ。何とかしないと…………
あっ! 閃いた。この危機的状況を乗り切るには、魔法を使うしかない。
スマホを手に取り、魔法アプリを立ち上げて、魔法リストを表示させた。この中から使えそうな魔法は…………。
【透視】
【全身の毛穴から甘い匂いが発生する】
【生卵を割った時、黄身が二つになる】
【二秒間だけ時間を止める】
【超高速移動】
【超絶口臭】
【高精度猫の鳴き声】
【ポケットから鳩を出せる】
……いやいや。魔法っていうか、もはや手品だよね? あー! クソ! ロクな魔法が無いっ! 出来れば当たりの魔法は使いたくないが、事態は一刻を争う。この状況を打破して、何としてもキスポイントをゲットするんだ!
意を決した俺は、魔法を駆使した脱出プランを立てた。まずは魔法発動──
【透視】
うお……凄いなコレ。本当に丸見えじゃんか。この密室から脱出するには縁ちゃんの正確な位置情報が必要だ。なので、俺は【透視】という魔法を使用した。
この魔法は読んで字のごとく、障害物があっても透けて見える魔法だ。本来、キッチョンやすーちゃんに対して使用しようと思っていた『当たり』だったのだが、背に腹は代えられない。
ウォークインクローゼットのドア越しにリビング内を透視、縁ちゃんの姿を探した。
確か……トイレの方に行ったよな。お、来た来た。リビングへ戻ってきた縁ちゃんの姿を視認した。さて、最初のプランを発動…………え? ええっ? 縁ちゃんに意識を集中させていたら、衣服がどんどん透けていって、やがて一糸纏わぬ産まれたままの姿へと変貌した。
う……うおおぉぉおおおお──! どうやらこの魔法は対象物に意識を集中すると、透けて見えるらしい。俺はラッキースケベに身悶えながらも、縁ちゃんの行動に注視した。これは……まるで企画モノのセクシーDVDを観てるみたいだ。
「……んもぉ、どこ行ったのぉ~。せっかく一緒にご飯食べに行こうと思ったのにぃ……てゆーか、何このガラクタ」
ロボピーに興味を示した縁ちゃんは、しかめっ面でロボピーを凝視している。
よし……予定通りだ。
脱出プランその二、縁ちゃんがロボピーに気を取られている間に、魔法【二秒間だけ時間を止める】を使用する。この『当たり』もヒロインズに使用する予定だったのに……くぅうう!
俺は縁ちゃんがロボピーのボディを撫で回し始めた事を確認し、今が絶好のタイミングだと悟った。
よし、ここから玄関のドアまで二秒もあれば充分だ。全力疾走で駆け抜けてやるぜ。スマホと財布を握り締める手に汗が滲む。
タイミングを見計らい、魔法【二秒だけ時間を止める】を発動させ──
ピロッピロッピロッ♪ ピロッピロッピロッ♪ ピロロロロロ…………ピロロロロロ────ン♪ キュピピーン! キュピピーンキュピピピーン!
突然、ロボピーから電子音が鳴り響いた。
「え、何コレ? 突然変な音鳴らして。怖いし、キモいんだけど」
ティントン♪
ウォークインクローゼット内に着信音が響き渡った。
「……ん? おねーちゃん? そこに居るのぉ?」
う……うわぁぁああああ──!!
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