クズその5【妹】
看護師さんでも来たのかと振り返ると、目に涙を貯めた女の子がその場に立ち尽くしていた。
「お、お姉ちゃん……」
女の子はそう呟くと、猛烈な勢いで俺に抱きついてきた。
「え?」
「お姉ちゃぁああん!」
うおぉ! ちょっと、ちょっと待って! えっと、この子は確か──俺は視覚ウインドを開いた。
【滝本縁(たきもとゆかり):都内の高校に通う十七歳の高校三年生◆髪型:セミロング◆服装:清楚系◆】
そうか、妹か。にしても情報少な……。
「……よかった。本当によかったぁ……うええーん!」
号泣して喜ぶとは姉想いのいい子だ。なにより姉に引けを取らずカワイイ。
本来ならば、脳死判定から奇跡の生還を果たした喜びを、姉妹で分かち合う感動のシーンなのだろうが、俺は違う意味合いの感動を覚えていた。
何故ならば──
「うわぁ~ん! お姉ちゃん、お姉ちゃあ~ん!」
ベッドに腰かけている俺は今、密着する縁ちゃんの胸に顔を埋めている。つるぺたの滝本移とは百八十度違う結構な巨乳の中に。
餓死から一転、奇跡の『生還』を果たした俺は、圧迫プレイという名の『性感』をも果たしてしまった。
あまりの感動に「……うぅ」と声を漏らすと、
「あ、ご、ごめん! 苦しかったよね。私、嬉しくてつい」
巨乳が俺の顔から剥がれた。え? もうやめちゃうの? 俺、まだ全然息止められるよ?
縁ちゃんは溢れる涙を拭うと、泣き顔から一転、眩しい笑顔を見せて、「私、お母さん呼んでくるね!」と、個室から小走りで出て行った。
……あぁ。もう少しだけあのマシュマロに顔を埋めていたかったな。
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