クズその4【規約】
「……ふぅ」
しかしまぁあれだな、餓死した上にゴブリンに転生予定だったとは……異世界に転生した所で、結局俺は底辺のままだったか。
俺は女神ルナがいなくなった病室で一人思った。きっと、魂自体が腐ってるんだろうな。でも……それでも首の皮一枚で何とかその危機は回避出来た。うん、ある意味これは俺にとって最大のチャンスなのかも知れない。
「……ええっと、スマホスマホっと」
俺は女神ルナの指示通り、滝本移が所有するスマホを手に取った。
「そういえばコレ、ロック掛かってるんじゃ……暗証番号とかわからないし、どうするかな」
不安を抱きながら画面をタッチしてみると、すぐにトップページが開いた。どうやら滝本移はセキュリティロックは施さないタイプの子らしい。
さっそくメールボックスを開き、送信されてきたメールに添付されていた【仮転生したあなたへ】というファイルを開いた。
「うっ……」
思わず声が漏れた。
ファイルを開いた瞬間、びっしりと細かな文字で書かれた【仮転生規約】なるものが目に飛び込んできた。
それは第一条から第五十条までびっしり記載されていて、まるで生前お世話になったカード会社の利用規約並みに細かい文字だ。
その内容を素早いフリックで華麗に読み進め(ほぼ読み飛ばすと言っていいくらい読んでいないのだが)、一番下にある【仮転生規約に承諾する】という項目にチェックを入れた。すると、【後日、素敵なプレゼントが届きます♪】などというメッセージが現れた。
プレゼント? 祝い金でもくれるのか?
俺はこれまでの人生、中学や高校に進学したって、祝い金なんて貰ったこともない。そんな俺にまさかの祝い金? いや、でもプレゼントって書いてあるから金じゃないか……おっと危ない危ない。この手のメッセージを安易に信じるのは禁物だ。大概特殊詐欺に引っ掛かるのがオチだし、俺も散々騙されてきたからな。プレゼントなどという甘い言葉ほど怖いものは無い。
まぁ、そんな事はさておき、ここからが重要だ。俺は気を取り直して別途で送信されてきた【滝本移に関する情報】というメールをクリックした。
ん? 今、なんか頭に違和感が……。
画面にはこんなメッセージが書かれている。
〈滝本移に関するデータをそちらへインプットしました。頭の中に思い浮かべれば、【視覚ウインド】にていつでも情報を閲覧する事が可能です〉
おお、異世界っぽいじゃないの~。俄然雰囲気出てきたね~。んじゃま、とりあえず……。
俺は移ちゃんのデータを呼び出した。
ピロン♪
【◆滝本移:二十歳、都内在住の女子大生◆コスプレ好き◆可愛いもの好き◆ゲーム大好き】
ちょっとざっくり過ぎな感じがしないでもないが、まぁいい。なにせこの子の体でこれから暫く過ごすのだから、早急に家族構成やら相関図などを頭にブチ込まなければならない。文句を言ってても始まらないのだ。
それから数分間、俺は視覚ウインドに次々と表示される移ちゃんに関する様々な情報をざっくりと頭に入れていく。勉強とは違ってスルスルと記憶出来るのは、やはりカワイイ女の子の個人情報だからだろう。
──と、一人でニマニマしていたら、突然個室の扉が開いた。
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