私、ダンジョン配達員!! アイテム生成スキルで皆様のダンジョン攻略をサポートします!! 戦闘? 配信? しませんって……あれ、バズってる?
第27話 ドットマジェスティ その5 最強のダンジョンアイテム
第27話 ドットマジェスティ その5 最強のダンジョンアイテム
「まだまだ」
リュックから出した小型のドローンと、小瓶に入った極小の牙、さらにフレイムガンを融合させた黒子。
現在、シンヤの周囲は麻痺性の煙で充満している。
視界を封じている!!
「これでええ!!」
ドローンがシンヤの背後へ周り、炎弾を発射した。
直撃すれば火傷するだけでなく、毒で戦闘不能となる。
「ぐわっ!!」
この悲鳴、間違いなく直撃した。
黒子の圧倒的な対応力と手数の前では、最凶のスキルでさえ無力と化すのだ。
「やった!!」
「なにが、やったなんだ?」
「え」
煙が晴れていく。
とっくに倒れていてもおかしくないシンヤは、未だ2本足で立っていた。
「どう仕掛けてくるかと思えば、少し熱いくらいか」
「な……」
「教えておいてやる。俺にはもう一つスキルがある」
「まさか……」
「状態異常無効のスキル。レベルAA」
火傷も、毒も通用しない。
黒子の作戦が、水の泡となる。
「で、でも!!」
ダメージを蓄積すればいつかは。
まだ背後にいたドローンが炎弾を連射した。
「あと、勘違いしているな」
絶対死角。
背後からの攻撃。
なのに、炎弾はすべて、跳ね返されてしまったのだ。
「な、なんで!?」
「見ていなくても良いんだ。認識さえしていれば」
「そんな……」
「あそこで寝ている
「けどさっき!!」
「当たったな、お前の炎弾。正確には、『当たってやった』のだ。なにをするのか、実際に味わってみたくてな」
状態異常が効かない。
死角からの攻撃も防ぐことができる。
強すぎる。
黒子の足が震える。
勝てない。
こちらの便利アイテムをすべて蹂躙する、圧倒的なパワー。
勝てるわけがない!!
シンヤが小石を拾った。
「この石、どうするか。斥力を利用し、弾丸のような速度で飛ばせるわけだが」
動けない。
足がすくんで逃げられない。
「お前を貫くか、あそこのザコへ撃つか」
「か、鎌瀬くん?」
「お前が、『仲間になるから助けてください』と懇願すれば、あいつに撃ってやろう」
そんなこと、できるわけがない。
シンヤのやつもそれを理解している。
もし黒子が攻撃を受ければ、敗北が決定する。
殺されはしなくても、連行される。
彼の脅しどおり、薬で従順な犬にされるかもしれない。
それでも、
「私を、撃てばいいです。鎌瀬くんには手を出さないで」
「くふふ、いいだろう」
超高速で飛ばされた小石が、黒子の腹部を貫いた。
血が吹き出る。激痛が全身を駆け巡り、意識が朦朧としていく。
「安心しろ。生きるか死ぬかのギリギリで傷を塞いでやる。ゆっくり眠れ」
まるで指示を受け入れるかのように、黒子は倒れた。
負けた。
完全な敗北。
手も足もでなかった。
次に目を覚ますころには、シンヤのアジトだろうか。
幼馴染の千彩都はきっと心配するだろう。
駿河は無事だろうか。
彼女は強いから負けないだろうけど、それでもシンヤを倒せるかどうか。
せめて逃げ切ってほしい。
「するが……さん……」
力になってあげたかった。
ダンジョンで困っている人をサポートするのが、仕事だから。
けど、もうそんな力はない。
黒子の瞳がシンヤを見つめる。
彼の手には、もう一つ石が握られていた。
鎌瀬太郎の方を向き、近づいている。
「な、なにを……」
「ほう、まだ起きていたか。単純な話だよ。……たとえ犯罪をもみ消そうが、目撃者は鬱陶しいからな」
「!?」
この男、はじめから!!
「あ、あなたって人は……」
どこまでもどこまでも、人を弄んで。
ダメだ。
のんきに眠っているわけにはいかない。
助けなくては。
鎌瀬太郎を、駿河を、助けるのは自分なんだ!!
「あっ」
感じる。この高揚感。
閃き。高鳴り。
スキルのレベルがアップした。
いまなら、何だって作れる気がする。
「欲しいのは、あの人を倒すアイテム」
黒子のスキルレベルがSになった。
追加された能力は、
欲するアイテムを生産するために必要な素材が、瞬時に脳内に浮かぶ力。
さらに、リュックからコードレスの
コードレスクリーナーだけではない。炎、水、風、雷、土の5属性の魔力石。
加えて、
「なんだ、なにをしている」
フロアの壁に埋め込まれた、次元に干渉する白い魔力石を含めた6つの魔力石が、掃除機と融合していく。
追加された能力は一つじゃない。
素材さえ判明すれば、勝手に生産が開始されるのだ。
「や、やっぱり私は、家電を素材に、ですね」
先ほど飛ばしたドローンが分解され、中に入っていたモーターも素材の一部となる。
クリーナーが眩く煌めく。
鋼鉄のように強固なり、持ち手も伸びて、虹色に発光し続ける。
「なにを作った、キサマ!!」
黒子が両手でクリーナーを握った。
「あなたを倒す、勝利の鍵です」
「俺を倒すだと?」
「約束しましたから、駿河さんをサポートするって。だから、ここであなたを倒します!!」
この男をぶちのめして、駿河の姉の情報を吐かせてやる!!
「デストーーーーム!!!! クリーナーーーーーーッッ!!!!」
デストームクリーナー。
正式名称、『ディメンション・アブゾーブ・ショック・アプライアンス』。
スキルレベルがSとなった黒子にのみ生産できる、最強のダンジョンアイテムである。
「うおおおおおおお!!!!」
クリーナーを振りかぶる。
なにをしようと無駄だと、シンヤがほくそ笑む。
しかし、
「なに!?」
体が、黒子へ吸い寄せられていく。
風か、自分と同じく引力を操っているのか。
どちらでもない。
なんにせよ、距離を取らなくては。
「スキル発動!!」
斥力を操り遠くへ弾こうとするが、黒子はピクリとも反応しない。
ならば自分を遠くへ……移動できない。
じゃあ黒子を引き寄せて、また首を締めてやる。
無理だ。こちらが吸い寄せられる速度が上がるだけだ。
辺りを確認すれば、壁が、天井が、砂埃が、少しずつ黒子に迫りつつあった。
遠くで気絶している鎌瀬太郎もだ。
「そうか!!」
デストームクリーナーの能力に、シンヤが気づく。
風でも引力でもない。空間だ。
次元に干渉するディディクリスタルの力を得て、空間そのものを吸引しているのだ。
言わば小さなブラックホール。
スキルレベルAAAのシンヤでは、レベルSで生産したアイテムにはパワーで勝てない!!
世界が、黒子に向けて凝縮されていく!!
「ここからいなくなれええええ!!!!!!」
圧縮された空気と魔力を帯びたクリーナーが、シンヤの胸部に直撃した。
「ぐああああっっ!!!!」
空間が戻っていく。
最強の攻撃アイテムを前に、シンヤは、なすすべもなく敗北したのだった。
「サポート、完了ッッ!!」
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