26 そのあと
そのあと、扉の外のやりとりを聞いていた二コラに話しかけられて、戸惑いつつも無視するといった出来事があったものの、どうにか邪魔物を除去。
姿を見られる前に、退散した。
翌日、学校に登校したらヒロインから美少女仮面の話をされて、冷静になった私は羞恥に悶えた。
幸いなのは、彼女は美少女仮面(赤面)の正体に気が付いていない事だ。
そして、二コラとは話していないらしい。
原作からストーリーが外れると、クリスの知識が役に立たなくなることもあるので、すべりこみセーフといったところか。
「ねぇ、クリス。私今回の件でとっても疲れたんだけど、これやめてもいいかしら」
「何言ってるんですか。お嬢様。流されるままに過ごしたら破滅ですよ」
「そうよねー」
正直、1エピソードのフォローだけでも、気力が大幅に削れる思いなのだが、こんなのでこの先やっていけるだろうか。
「あら、どうしたんですの、そんなにぐったりとなさって。そうだ、頼みたい事があるんですけども」
げ、マローナ。
「なっ、何でしょうか」
「実は」
かくかくしかじか。
はぁ~、乙女ゲームの悪役の取り巻きなんてなるんじゃなかった。
「大丈夫ですよ、お嬢様。お嬢様がどんなに残念でも、私は見捨てませんから。(ボソッ)いざとなったら一緒に遠くへ逃げましょう」
「ありがとう。でも私が主人なんだから言葉は選んで」
俺は、頭を抱えているお嬢様を横から見つめる。
俺も転生者だが、記憶がないものの彼女もこの世界の転生者だ。
相田くりす。
それが前世の彼女の名前だ。
彼女には伏せている事情だが、わけあって、相思相愛だった俺達は、不幸な事故によって死亡。
この屋敷に仕えてしばらくしてから、記憶を思い出した俺は歓喜した。
そして、こう考えた。この世界で、幸せになるために生まれ直したのだと。
前世の彼女は、俺と相思相愛である事をかたくなに認めようとはしなかったし、付き合っている事も口に出そうとはしなかった。それどころか、日常で会話した事はほとんどないが、俺は分かっている。
彼女もきっと俺との再会を望んでくれたのだ。
だから、俺は悪役令嬢の取り巻きになってしまった彼女を、死の運命から守らなければならない。
どんな事をしてでも。
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