SS 時短スイーツ



「前世の知識がはじめて、いい感じに役にたったわね」


 私はクリスの手元を見る。


 そこには通常の五分の一の時間で作られたミニケーキがあった。


「そんな事ありませんよ。ゲームの知識はなかったら大変だったでしょう?」

「そうだけど、いい感じではないわよね」


 クリスは話をそらすために、別の話題をふった。


「それはそれとして、前世で学んだ時短料理で作ったケーキです。どうぞ召し上がってください」

「美味しそう」


 フォークをさして、端から少しずつ食べていくが、甘さのバランスがちょうどよい。

 早くできて、美味しいなんて、これこそ本来の役に立つ前世の知識、というやつじゃないだろうか。


「料理に興味とかあったの?」

「いえ、特別には、でも、食べてほしい人がいたので」

「そう」

「あ、そのエピソードそんなに興味ないんですね」


 そりゃ、見たことない顔の相手より、目の前で確実においしいスイーツをとるわ。


 口の中でとろけていくスイーツは、ここ最近すさみがちだった私の心を癒してくれた。


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