17 逃避行のお誘い



「ヒロインとお友達イベント」を終了させた後、私はクリスにさっそく相談。


「どっ、どうすればいいのよっ!?」

「さすがの私も予想外です。これはもう諦めるしかないですね」

「そんなあっさり諦めないでくれるっ!?」


 狼狽する私の手を掴んだクリスは、甘い声で囁く。


「こうなったら私と一緒に逃げましょう。そして、どこか遠くで二人で生活するんです」

「ええっ!?」


 いきなり話が飛びすぎなんじゃないだろうか。


 いやでも、それもありかもしれない。


 マローナに捕まって、死を迎えるくらいなら、いっそ。


 だって、頭の良いクリスと一緒にいれば、将来の不安は半分消えてなくなっているものだし。


 けれど私ははっとなる。


「両親! 私の両親はどうなるの!? マローナって、周りの人間を巻き込むタイプじゃないわよね?」


 すると、クリスが俯いて何やら「チッ」あれ? 今舌打ちした?


「ええ、そうです。気に入らない人間がいた場合は、周りの人間にも嫌がらせするタイプですよ。私とした事が失念していました。旦那様と奥様には迷惑をかけられませんね」


 けれど、今のクリスはいつも通り。


 私の聞き間違いだっただろうか。


「(ボソボソ)せっかく、誘導してお嬢様と二人っきりになれるかと思ったら」

「何か言った?」

「いいえ、何も。早急に対策を考えましょう」


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