16 ヒロインと友達になってしまった



「それじゃあ、私はクリスと話があるから」


 こんな所をマローナに見られたら、どんな事になるやら。


 私は早々に、自分の執事をダシにして、その場から退散する事にした。


 けれど、ヒロインが「待ってください」と引きとめる。


「よかったら、私のお友達になってくれませんか? こんな事、厚かましいお願いだと思うんですけど、平民の私と話してくれる人なんてあまりいないので」


 お、おともだち?


 えっ。


 ええーっ!


 いや、私マローナの取り巻きなんですけど。認めたくないけど。


 あなたをイジメていた人達側なんですけど。


 でも、こうやって「お友達」発言するって事は、そういうのは見てなかったのかしら。


 なら、まあ大丈夫かな。悪人認定されるのは嫌だもの。


「大丈夫よね」


 なんて、思ってたら。口に出ていたらしい。


「ありがとうございますっ。嬉しいですっ」


 はっ、しまった。


 今のはそういう意味じゃなくてっ!


 訂正しようとするも後のまつり。


 喜んだ様子のヒロインが、「それじゃあ、また会ったらお話しましょう」とどこかへ行ってしまった。


「お嬢様」


 ああっ。クリス、そんな目で私を見ないで。こんな残念な私をみないでよ。


 乙女ゲームの悪役令嬢の取り巻きな私が、ヒロインと友達になってしまった。


 一体これからどうすればいいのだろう。


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