12 二コラのトラウマ



 クリスは説明を続けていき、二コラのトラウマが生まれた時の事を語りだす。


「その後が問題なんですよ。壊れたピアノの部品を取り返しに、貧民街のゴミ山に行くんですけど、そこでそこの住人達が解体しているという。その後は言わなくてもわかりますね」

「悲惨な事になったのね。想像したら悲しくなってきたわ」


 演奏すると、そのトラウマを思い出してしまうのだろう。


「でもそれなら、貧しく卑しい平民、というイメージがついているロインになんで惚れるの?」

「貧民街の住民に乱暴されていた彼を助けたのも、また同じ身分の人だったのですよ」

「なるほどね。それがあったからまだ、ピアノに触れられているのかもしれないわね」


 それにしても勿体ない。


 前半の演奏はとても素晴らしかったのに。

 これでは宝の持ち腐れだ。

 彼が完璧な演奏をできるようになったら、きっと多くの人がその成長を祝福するだろうに。


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