11 二コラの演奏



 数十分後、コンクールが始まって、何人もの人が演奏。

 そして、何十人目かで二コラの番がやってきた。


 ピアノに指を滑らせる彼からは自然な気品が漂っている。


 奏でられる旋律は、優雅で繊細。


 とても入賞どまりの人間の演奏とは思えなかった。


 だが、問題は後からでてくるらしい。


 彼の指が明らかにぎこちなくなった。

 顔色も何だか悪そう。


 これが、彼を苦しめているらしい。


「何かトラウマでもあるのかしら」

「ええ、まあ人前で喋るには少々抵抗のある内容のものが」

「そんないひどいの?」

「はぁ、(ぼそぼそ)お気に入りのピアノを壊されてしまうんですよ。演奏家になる事を反対する両親に」

「貴族が演奏家になるというのなら、よくある事ね」

「ドライですね」


 だって、貴族の家名を捨てるのはそれなりに大変な事だもの。


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