第7話 あなたを信じていいですか?

僕は、隙をみて飛び出した。コンビニの駐車場は車の出入りが激しくて、僕が飛び降りると入ってきた車が、急ブレーキをかけて止まった。間一髪で、難を逃れた僕は、追ってくる運転手達から逃れる為に、駐車場から、裏手の山に、走り込み、運転手の追手をかわした。慌てて、藪の中に、飛び込んだから、あちこちに擦り傷を負った。そういえば、僕らは、大事に育てられたから、肉球もふわふわだったのに、この所の放浪で、僕の肉球も姿も、情けないものになってた。薮から、外を覗き込むと、運転手達は、諦めたのか、車に戻ると、今きた道の反対側に去って行った。

「ごめんな」

みんな、どこに連れて行かれるんだろう。僕は、人恋しくて、薮から、コンビニの駐車場に降りた。

「何か、食べるもの・・・」

僕は、コンビニの裏手に回った。匂いは、するが、どこを探しても食べ物はない。僕は、地面に座り込み、行き交う車を眺めていた。いつもと、変わらない光景。だけど、あの日から、僕らに訪れた日々は、全く想像しない日々だった。

「飼い主さんは、どこ?」

兄弟は、僕に聞いていた。

「今頃、どこに?」

悪い奴らに捕まってなければいい。お腹を空かせてなければいい。生きていてくれればいい。僕は、悲しくなった。悲しくなって、あの時のボスのように、泣いていた。

「誰か、僕を見つけて」

僕の声は、細く高く空に響いていった。僕は、ため息をついて、重ねた前足の上に顎を乗せていた。その時、赤い車が、駐車場に入ってきた。運転手と目が合い、助手席から、女性が降りてきた。僕の様子を伺いながら、低い姿勢で、僕に声をかけてくる。僕は、頭をあげ、女性の様子を見ていた。

「どこから来たの?」

女性は、掌をそっと、僕に差し出した。僕を見つめる瞳は、暖かい。ここ何日かで、初めて見る優しさ溢れる人の顔だった。

「おいで」

僕の皮脂で汚れた頭を女性は、そっと撫でている。

「一人なの?」

僕が、ずっと、女性の顔を見ていた。僕の汚れ切った姿や、細くなっているお腹を一目見て、僕が、彷徨っている犬という事に気づいたのだろう。

「アル?というのね」

僕の赤い首輪には、名札が付いていた。現在とは、違い、その頃はまだ、首輪につける事が主流だった。久しぶりに、僕の名前を呼ばれて、僕は嬉しかった。彼女の掌が暖かかった。

「一緒においで」

彼女は、汚い僕を抱え上げた。

「お家を探してあげる」

赤い車に、乗り込むと、運転手に話しかける。運転手は、頷きながら笑い。僕の頭を撫でる。

「まずは、病院に行かないとな」

運転手は、女性に微笑みかけると車を走らせた。

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