第8話 僕の幸せ
僕は、すぐ動物病院に連れて行かれた。車に乗っていた女性は、茶都華と言って、運転していた若い男性の妻だった。結婚して、長い時間、2人でいるが、なかなか子供を授かる事ができず、犬を先に育てると良いと、茶都華の祖母に言われ、保護犬を探していたらしい。譲渡会にも行ったが、悪徳の保護団体だったらしく、高額のお金を要求されて断ったばかりらしい。震災もあって、なかなかこの地に住んでいる人に、仔犬を分けてくれるのは、困難だったが、偶然にも、コンビニの駐車場で、哭いている僕を見かけたらしい。僕を最初、見た時は、かなり驚いたらしい。被毛は、伸び放題、凝り固まり、表情は、わからず、大きな毛玉の塊だった。真っ直ぐ、連れて行かれたのは、動物病院で、僕の年齢とか、栄養状態等も検査してもらった。
「どこも、悪くないです」
そう言われて、2人は顔を見合わせて喜んでいた。この後、シャンプーをするからと、次回に、ワクチンの良夜雨をして、僕は、いつか、行ってみたかったというペットサロンに連れて行かれた。カットを行い、シャンプーされた僕は、すっかり身軽になり、飼い主さん達と一緒にいた時の、僕の姿になった。
「うわぁ・・・」
「まさかと、思っていたけど」
二人は、声を上げた。
「ボーダーコリーかもって、先生が言っていたけど本当だったんだ」
二人は、複雑な顔をした。
「もしかしたら、放浪していたのなら、雑種の犬かもしれません。」
「大きくなるかもしれない」
そう言われて、二人は、あれこれ心配したらしい。ボーダコリーと聞いて、嬉しさ半分。今住んでいる家で、大丈夫なのか、不安になったらしい。
「運動量が、もの凄いって」
「俺が、散歩に連れていく」
「私も」
2人は、夢見る様に、これからの生活を話し合っていた。僕の家ができる。あの誰も、いなくなった山間の家に、帰る事は無くなるのだろうか。
月日は、どんどん流れていって、僕は、2人と生活する家が、僕の家だと思える様になっていった。あの日の事は、忘れてもいないし、2人に外へ連れて行かれた時には、勿論、みんなを探しているけど、兄弟達にも、飼い主さん達にも、会える事はなかった。僕は、何度か、あの動物病院に連れて行かれ、ワクチンやら検査をされて、いつの間にか、成犬と呼ばれるまでになった。僕は、すっかり、幸せな暮らしに慣れていったんだ。
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