移動要塞型超巨大遊園施設
その瞬間、俺は喜びを爆発させた。
「……やった、ミアが勝ったぞ!」
体内のナノマシンを
少なくとも、俺が助けに入らなければならない状況だった。
しかしミアは――持ち直した。
「何てことだ。ミアは自分の意思で体内のナノマシンを排除したようだ。ふむ、人類の進化は実に興味深いよ」
「細かい話はどうでもいいけど、とにかく……嬉しすぎだろ。……ミア、本当によかったよ」
「タザキ、なぜ泣いているんだい?」
「分からん」
ぼろぼろになりながらも
ミアは強い。
ミアはかわいい。
装備がちょっとえっちところもいい。
そんなミアが勝てて、普通にうれしい。
あれ、まさか俺の語彙……貧弱すぎ? まあいいか。
「ミアのところに行こう。怪我してたら手当しなきゃいけないし」
俺はストームを操縦して、ミアのもとに向かった。
「帰ったらお祝いだ。あーでも食料なかったなあ……。またギガモールに忍び込んでみるか?」
なんて間の抜けたことを言っていると、ポルカが急に切迫した声になった。
「タザキ、気をつけるんだ。危険な
「え」
直後、地面が揺れた。
そして恐ろしいほどの地鳴りがする。
「ふむ……そう来るか。結論から言う。ここから急いで離脱した方がいい。ストームの操縦は僕に任せてくれ」
ポルカが言った直後、ストームが急加速した。
あっと言う間にミアのもとに到着する。
しかしミアも怪訝な表情だ。
「どうしたのだ……?」
ポルカは勝利の余韻も何もなく、やはり切迫した声で言う。
「逃げよう、ミア。ここは危険だ」
「わ……分かった。だが何が起きてるんだ?」
「移動しながら説明する。急いで!」
ミアは戸惑いながらも、ストームに乗った。
行きとは逆に俺が前に騎乗していて、ミアが俺の背中に密着するような体勢になる。
胸の感触を背中で感じて最高――みたいな気分にはなれなかった。
不安な気持ちを抑えながら、俺はポルカに問いかける。
「……なあポルカ、説明してくれよ。何が起きているんだ?」
「前に
「ギガモールの中にも強い
「半分正解だ」
「半分? じゃあ残りの半分は?」
「強いなんてレベルじゃない。超強力な
ポルカの言葉が遮られる。
突然、音楽が流れてきたのだ。
やたら明るい陽気な旋律。
そして聞き覚えがあるメロディだ。
「確かこれって……」
ギガモールの中にある遊園地、フェアリーランドで戦っていた時に流れていたパレードの曲だ。
「何であの時の音楽が……?」
「まずいな、
ストームが「ぶるるっ」といななき、さらに加速する。
だが俺たちは手遅れだった。
俺たちの向かう先に、巨大な壁がせり出してきたのだ。
壁は煉瓦みたいな西洋風の造りのやつで、かなり高さがある。乗り越えることはできないだろう。
別の方向に向かおうとするが、その先にも既に壁が出現していた。壁は、ギガモールを囲うようにして出現していたのだ。
「タザキ! 後ろだ!」
珍しくミアが慌てた声を出す。
俺は加速するストームにしがみつきながら、どうにか振り返った。
俺は、その光景に絶句した。
「………………え?」
びこん、と
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移動要塞型超巨大遊園施設〈フェアリーランド〉。
遊園施設内に張り巡らされたあらゆるシステム、機械類が
施設内の機械は有機的に連携し、
想定される総合レベル:10000
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* * *
――フェアリーランド。
ギガモールに併設された、テーマパーク。
大人も子どもも楽しめる、妖精の国。
かつて文明が繁栄していた頃には、きっと多くの人々の心を楽しませていたことだろう。
だが当時の人々も、ここまでは想像していなかったはずだ。
「城って……動くんだな」
俺の語彙力は急激に低下する。
というか、脳が理解を拒んでいるような感覚だ。
ミアもまた呆れ果て、半ばやけくそな感想を言う。
「くはっ……!!! タザキに出会ってから、退屈な日というものがないな。城を動かすなど、考えたこともない! 我が国にも、あの要塞の技術を取り入れたいものだ」
そしてポルカは、相変わらずだった。
「フェアリーランド全体を支配し、進化を促す
いちばんのネックはエネルギーだけど、恐らくは自前で核融合炉でも作ったのだろうね。そうでもしなければ、城が動くはずがないからね。それにしてもすごいよ。僕の記録の中でも最大級の
「ハハハハ……スゴイゾ。ポルカハナンデモシッテイルナア…………ハハハハ…………て言うか、ダメだろこれ! 反則だって……!!!」
ゴウンゴウンゴウン……と唸るような駆動音とともに、フェアリーランドの城が近づいてくる。
俺たちがいる位置から数百メートルほどのところで、フェアリーランドは動きを止めた。
そして――フェアリーランドは形を変えた。
城に亀裂が入り、その内側がせり出すように展開したのだ。
例えるなら、開くと立体的に展開する絵本みたいな感じだ。
つまりフェアリーランドの城そのものが一つのギミックになっていて、内側にはさらに巨大なフェアリーランドが隠されていたのだ。
俺は叫ぶことしかできなかった。
「うひょぉおおおお!!!」
ミアはただひたすらに笑っていた。まあ、そうなるよな。
「はは、あはははは!!!」
巨大なギミックが天高く展開し、ゆっくりと地上に降りてくる。
――ズオオオオオ!!!
轟音とともに、荒涼とした大地がフェアリーランドのファニーな世界観で埋め尽くされていく。
ふと気づけば、俺たちが立っている場所も動いていた。
「ええ?? 俺たち飛んでる? ……うおお、高っ!」
どうやら地中に、巨大な舞台装置のようなものが埋め込まれていたらしい。
俺たちは地面ごと浮かび、強制的に移動される。
そしてしばしの空中散歩の後に、フェアリーランドの庭園に着地した。
「これは、完全に予想外の事態だよ」
「こんなの誰も予想なんてできないだろ。問題ない……とてもポルカを責める気にはなれない」
「そう言ってもらえると助かる。さて、タザキ――」
ポルカは冷静に、状況を告げた。
「覚悟を決めてくれ。次の敵は
俺はこの何十日か、血の滲むようなトレーニングをしてきた。
それはミアの因縁の敵――〝先王殺しの爛れ猿〟と戦うためだ。
あるいは、ミアがピンチに陥った時に救い出すためだ。
いずれ目標としていたのは、一体の
あまりにもケタが違すぎる。
俺たちは文字どおり、最初から超巨大なフェアリーランドのステージで踊らされていたのだ。
フェアリーランドに陽気なBGMが響く中、俺はさらに途轍もない光景を目にする。
「う、うわああああ……!」
重量にすれば数千トンはあるはずの城が、空に浮かんだのだ。
そして城はバラバラのパーツに分解されていく。
まるで合体ロボのように超変形を遂げていく。
だが次の瞬間現れたのはロボではなかった。
「ポルカ。あれって……あの時の妖精じゃないか?」
「そのようだね。僕らをフェアリーランドに案内したガイドボット――ベリアルだ」
俺は、陽気に話す妖精のことを思い出す。
ベリアルはガイドボットで、少女と妖精の二つの姿を持ち、
もっとも、案内された先のフェアリーランドは
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*ベリアル・リリカル・グリッドスター
機械仕掛けの巨大妖精。
ベリアルはこの世界の全てを支配する。
推定総合レベル:計測不能
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