拡張現実(オーギュメント)リング
寝て起きたら一万年後の未来。
そして今、俺は
「GSHAAAA――!!」
何かもの凄い勢いで叫んでくるぞ。
隣にはポルカという名の猫型ロボット。
正体は分からないが、俺を助けてくれるらしい。
「タザキ、今から僕が指示するとおりに動いてくれ。このまま20メートル直進。右に曲がって10メートル。そこにあるビルの四階まで上るんだ」
「わ、分かった……!」
走った先に、エグい角度で傾いたビルがあった。
今にも崩れ落ちそうだ。
が、余計な心配をしている余裕はない。
「うぁあああ!」
壁をよじ登り、ひび割れたコンクリートの階段を駆け上がる。
四階まで来たところで、急にあたりは静かになる。
俺は地面にへたり込んだ。
「ぜえ……はあ…………死ぬかと思った……」
「いいぞ、敵は僕たちを見失った。とりあえず中に入ろうか」
「了解だ」
崩壊した壁の隙間を探して、俺は建物の中に入った。
「じゃあ早速だけど、これを装備してくれ」
ポルカは空中でふわりと回転すると、尻尾に装着していたリングを俺に渡した。
「指輪……? つけろってことか?」
「そうさ。でもただの指輪じゃない。
「おーぎゅめんと? 聞いたことがないけど、何なんだ?」
「実際にやった方が速い。とにかく装着してみようか」
「お、おう……」
指輪を装着すると、目の前にテキストウィンドウが現れた。
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*
*YES/NO
*YESを選択すると、肉体に
多大なダメージを被る場合があります
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「な、何だこれ!?」
まるでゲームの選択画面。
VRゲームのラノベでとかによく出てくる、例のアレだ。
ステータスオープン、とか唱えると出てくるやつ。
「
「で、イエスかノーか選べってことか。……でも何だよ、肉体へのダメージって。恐怖しかないぞ?」
「契約の決まり文句みたいなものさ。冒険に怪我はつきものだからね。タザキはYESを選ぶことで、僕の情報支援を受けられる」
「選ばなかったら?」
「その場合でも僕は君をサポートする。でも、死ぬかもしれない。さあタザキ、決断するんだ。
「マジかよー」
正体不明の猫っぽい存在に、契約を迫られる――。
まるで往年の名作アニメのシチュエーションにそっくりだ。
でも俺は魔法少女じゃなくて、全裸男子高生だ。
「質問いいか?」
「何だい?」
「イエスを選んだら、勝てるか?」
「何事も百パーセントはありえない。勝てる確率が飛躍的に高まる、とだけ言っておこうか。それから、
「ぼ、冒険? お、おう……」
冒険よりも普通に帰りたいんだが。
と反論したいところだが、助かるなら今は何でもいい。
「じゃあイエスを選ぶデメリットは?」
「ない。外したければいつでも外せる。それはタザキの自由だ」
「……分かった。やろう」
ここまで言われたら、やらない理由はない。
俺は指先で「YES」のアイコンに触れた。
耳元で機械音声がした。
『
ぶん、と震えるような音がして、目の前に新たなシステムウィンドウが広がった。
「おお……これは凄いな」
俺は指を動かし、画面を操作した。
エンカウントした
遊びごたえがあるアクションゲームを彷彿とさせるような画面だ。
うん、何となく使い勝手は分かったぞ。
「タザキ。この世界は現実だ。チートもなければ無双もない。だからちゃんと死ぬ。でも僕はね。この現実を君が楽しめるようにしたいんだ。今からこの現実は、少しだけゲームみたいになる。どうだい?」
この感想を言うのは
「確かに……楽しそうだ。少しだけな」
「
ポルカが言うと、目の前に
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*
個体名:
全長:約15メートル
重量:約200トン
食性:金属生命及び有機生命
特質:変異竜属。全身を鋼鉄の装甲で覆われている。
性格:執念深く残虐。逃した獲物に強い執着を示す。
レア度:☆☆☆☆☆
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「これが君を狙っている
「マジかよ……最悪だな」
しかも執念深く残虐って。
最悪オブ最悪ってやつじゃないか。
「
「ああ、見えてるよ」
視界の上の方に、アクションゲームによく出てくるバーが投影されている。
北の方角を示す「N」のアイコンと、動物のシルエットみたいなアイコンだ。
さらに現実がゲームめいてきたな。
「この動物のアイコンみたいなのが……
「そのとおり。
「そういうことか。ちょっと試してみよう」
頭を動かして、周囲を見渡してみる。
頭を左に動かすと、連動して 「N」の位置は右にずれる。
「すご。めっちゃ便利だな」
これなら道に迷うこともなさそうだし、
「あ……こんなところにいたか」
頭を動かしていると、頭が二つある獣のアイコンが見えた。
「まだ動いている。やっぱり、俺を探してるみたいだな」
そして気になることが一つ。
「ポルカ、色が違うのは何か理由があるのか?」
「タザキへの
俺がビルから降りてくるのを待ちかまえているのだろう。
「てことは……奴を倒すしかないってことか」
あの巨体を思い出すだけで、背筋が寒くなる。
とても人間が勝てる相手とは思えない。
しかも俺、まだ全裸なんだよな。
「なあポルカ。……本当に勝てるのか?」
今のところ俺が持っている武器はない。
謎の未来デバイスで現実がゲームみたいになっただけ、とも言える。
だがポルカは自信満々で、答えた。
「
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