第50話 R条約


「宇多方」について語ろう。


 マスコミ業界では、「宇多方」ネタは御法度ごはっととされている。地域差別を助長するから、というわけではない。「宇多方」の問題は、決して大袈裟おおげさではなく、国家機密に関わるからだ。


 僕も最初に聞いた時は、耳を疑ったものである。かつて、日本政府は別界のおさ密約みつやくを交わしたというのだ。


 通称「R条約」というらしい。「R」とは、「robbing(強奪)」だという説がある。まさか、「宇多方」の人間が別界に強奪されるからなのか?


 他にもう一つ、「鹿鳴館ろくめいかん」の「R」だという説がある。「R条約」は明治時代に、鹿鳴館で締結ていけつされたからだ、というのだ。


 鹿鳴館とは言うまでもなく、海外の賓客ひんきゃくや外交官のための迎賓館げいひんかんである。まさか、井上かおるが別界の長も接待した、とでもいうのか? トンデモ話としか言いようがない。


 申し訳ないが、「R条約」に関しては、これ以上の情報はない。関係者には緘口令かんこうれいがしかれているらしく、めぼしい情報が見つからないからだ。


 それに加えて、何度か身の危険を感じたせいもある。冗談めかして、「これ以上、調べるのなら、命の保証をしない」と言われたこともある。


 もしかしたら、宇多方について語りすぎたのかもしれない。僕は不自然な死に方をした場合、その原因は「R条約」にある、と言っていいだろう。


 ただ、これだけは断言しておく。「R条約」の中身が暴かれる日が、きっと、いつか来る。少なくとも、僕はそう信じている。




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