第54話 パープル・レイン
「宇多方」について語ろう。
夕暮れでもないのに、空が薄い紫色に染まることがある。正確には、空一面が薄い紫色の雲に覆われるのだ。そんな時は、危険な雨が降り始めるので、外出すべきではない。
パープル・レイン。文字通り、紫色の雨である。弱酸性の雨粒に毒性はないが、白い衣服に付着すると染みができてしまう。クリーニングの染み抜きに出しても、絶対に落ちないという。
ま
た、酸っぱい臭いがすることも忘れてはならない。専門家によると、この悪臭のせいで、体調を崩すこともあるし、精神に変調をきたす可能性もある。
神隠しと殺人事件、交通事故が増加するのは、決まって雨降りの日なのだ。死傷者は年間二五〇人を超えている。こんな雨が現世のものであるはずがない。おそらく、別界から流れ出てきた雲なのだ。
梅雨時には、空が一週間以上も、薄い紫色に染まることがある。厄介な雲が、宇多方の空に居座り続けるのだ。専門家の中には、雲そっくりの魔物である、と指摘する者もいる。
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