第55話 朱色の巨鳥


「宇多方」について語ろう。


 気温が上昇し、陽射しが強くなると、竜晄山りゅうこうざんに大きな鳥が出現する。複数の目撃者によると、朱色の巨鳥である。第19話で「黒いカモメ」でも大きな鳥が取り上げたが、あの数倍の大きさである。


 翼を広げると軽く三メートルはあると推測され、中には五メートル級も目撃されている。どうやら、中生代の翼竜よくりゅう,プテラノドンに酷似しているらしい。太古からの生き残りではなく、別界からやってきたのだろう。


 ただ、見かけに寄らず、巨鳥は穏やかな性格らしい。草食であることが確認されており、池に群生しているハスの葉が大好物だという。そのため、ずっと無害だと思われてきた。


 ところが、悲惨な事件が起こってしまった。巨鳥の巣の近くを知らずに通りかかった登山者が、頭部を食いちぎられたのだ。どうやら、産卵期だったらしく、警戒心が強くなっていたらしい。


 それ以来、朱色の巨鳥は危険生物と見なされ、ライオンやホホジロサメなどと同じ猛獣扱いを受けている。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る