第47話 転生の沼

「宇多方」について語ろう。


 桃乃華市北東の山間部には、心霊スポットで知られる沼がある。底なし沼と噂されるほど、事故死の多い場所なので、立ち入り禁止になっている。高い鉄柵で囲まれているのだが、若者や子供の神隠しが後を絶たない。


 近所の年配者が口酸っぱく、近寄れば魔物に食われると警告したのに、心霊スポットとしてアングラサイトで紹介されたせいで、バカな連中がくるらしい。彼らが沼に飲み込まれ、次々と犠牲になったことは想像に難くない。


 沼は間違いなく、別界とつながっている。おそらく、神か魔物の怒りをかってしまったのだ。


 宇多方には「ニワトリ並みの頭しかない奴は、ニワトリからやり直せ」という言い伝えがある。バカな奴はニワトリに生まれ変わる、という意味だ。ニワトリ並みの頭もない奴は、どうなるのだろう。


 神隠しにあった連中はドロドロに溶かされ、複数の人間の混じり合ったスープになると言われている。生命のスープというわけだ。微生物のような命かもしれないが、かろうじて生きていると思われる。


 ただ、知的生命体として転生することはありえない。別界の波動を受けるため、生まれ変わったとしても、おそらく醜い魔物の姿をしていることだろう。


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