第46話 光の階段


「宇多方」について語ろう。


 桃乃華市の安曇川河川敷は、ジョギングや散歩の定番コースである。小学生の頃、雨上がりに祖母と一緒に歩いたことがあった。


「ごらん、〈光の階段〉ができとる」そう言って、祖母は空を指さした。なるほど、厚い雨雲の裂け目から地上へと、光のラインが斜めに伸びていた。まさに、〈光の階段〉である。とても美しい情景だった。


〈天使の階段〉〈天使の梯子〉とも呼ばれるし、〈レンブラント光線〉〈薄明光線〉という別名もあるらしい。


 一般的には、天上世界へとつながる階段、となるのだろう。だが、「宇多方」の人間は正反対の解釈をする。


「黒い天使が降りてきよるな」と、祖母は言った。罪を犯した天使が地上に降りてくる、という禍々しい解釈になるのだ。一言でいえば、それは堕天使だろう。


 黒い天使のもたらすものが、地上の人々にとってありがたいものとは思えない。〈光の階段〉が現れた翌日に大きな地震があったし、数日後に台風による豪雨に見舞われたことも、無関係ではないと思われる。


 今は亡き祖母によると、黒い天使が別界の化け物と交わると大いなる魔物になる、といった伝説まであるそうだ。




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