第45話 蜃気楼(しんきろう)
「宇多方」について語ろう。
あるはずもないものが、街中に突然、出現することがある。桃乃華市内に現れたものは、どう見ても現代日本のものではない。
例えば、ビルの谷間で逆立ちをした巨大ピラミッド。頂部が雲に隠れるほど背の高い石の尖塔。翼をもった獅子の巨大なブロンズ像。これらは間違いなく、別界の巨大建造物だ。ただし、すべて実体がない。
いわゆる、蜃気楼である。三〇分程度で消えてしまうので、市民はいちいち騒がない。しかし、お調子者や旅行者などは、ふざけて近づきすぎてしまう。人を喰らうのは、黄昏ばかりではない。蜃気楼も人をまるごと飲み込んでしまう。
神隠しにあってからでは遅すぎるし、うっかり手を伸ばして手首から先を失った者も多い。さわらぬ神に祟りなし。身体の一部を失いたくないのなら、蜃気楼など宇多方の超自然現象には近づくべきではない。
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