第44話 人身事故


「宇多方」について語ろう。


 雨降りが続くと、なぜか、交通事故や殺人事件が増える。一〇%や二〇%の上昇ではきかない。晴れの日の二、三倍にのぼることもある。


 とりわけ、宇多方一のターミナル駅では、人身事故が多発する。決して自殺しそうにない人々が、突然、列車に飛び込んでしまうのだ。当然、遺書は残されていない。残された家族は涙にくれるばかりである。


 ちなみに、自殺者の性別,年齢層,職業などに共通点は見られない。

 鉄道会社は、人身事故の対策を講じた。警備員を増やしたり、お祓いを行ったりもした。しかし、一向に効果が上がらない。


 言うまでもなく、別界が関係しているからだ。別界がらみの事故事件に、現世の常識は通用しない。わかりきったことである。


 困り切った鉄道会社が、宇多方神社の宮司に相談したところ、一つの対策案を授かった。それは、とてもシンプルな方法だった。


 それ以来、駅構内のあちこちに、てるてる坊主が吊り下げられている。要は、雨が降らなければいい、というわけである。


 てるてる坊主の効き目はあったのか、すでにひと月以上、晴れの日が続いている。そのせいか、ターミナル駅の飛び込み自殺は二割ほど減少した。



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