第39話 下着泥棒
「宇多方」について語ろう。
桃乃華市に本社がある中小企業で、奇妙な出来事があった。女子寮で下着泥棒の被害が多発したため、管理人が防犯カメラを設置したところ、不気味な影が映りこんでいたのだ。
犯人は、倒錯趣味の変態でもストレスを抱えた恥知らずでもなく、等身大のクモだった。アメコミのスパイダーマンではない。巨大な女郎グモである。
見るからに、醜悪な化け物だった。黒と黄色の毒々しいカラーリング。脚を広げれば七,八メートルはあった。そいつが器用に脚をあやつり、女性下着を掴んでは、むさぼり食っていた。蛇足になるが、レースの黒下着がお気に入りだったようだ。
当局が付近の探索をおこなったところ、女子寮から数キロ離れた雑木林の中で、巨大グモの巣が見つかった。大学の研究室でクモの糸を調べたところ、構成分子からポリエステルやナイロンなどの化学繊維と判明した。
クモは女性下着を体内で分解し、糸に変えて尻から噴出していたのだろう。しかも、この糸は、特殊なフェロモンを発散するらしい。若い男性が次々と誘き寄せられ、クモの巣にからまって捕らえられてしまう。彼らが巨大グモの餌食となったことは、想像に難くない。
当局が出動し、クモの巣を焼いたところ、巨大グモは姿を消した。おそらく、別界に還っていったのだろう。尚、付近を調べたところ、多数の人骨が発見された。被害者の男性は少なくとも十二人にのぼるらしい。
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