第38話 変わらない人口


「宇多方」について語ろう。


 行方不明者が全国一多いのに、なぜか、宇多方の人口は横這よこばいである。月初めに五、六人が消えることがあっても、なぜか、月末には人口の帳尻ちょうじりが合っている。年配者によると、昭和期からそうだったらしい。宇多方の七不思議といえるだろう。


 一時期、役所が数字を水増ししているという噂があったが、第三者機関の調査によって、そのような事実がないことは既に確認されている。


 この謎の解明は難しいと思われるが、極めて合理的な仮説がある。行方不明者は確かに多いのだが、それと同じ数の人間が別界から移ってきた、という考え方だ。戻り人(第3話「輸血」参照)が混じっている可能性があるし、別界からやってきた者たちが人間であるとは限らない。


 とにもかくにも、宇多方と別界の間でバランスがとれていることだけは、事実のようだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る