第36話 廃工場


「宇多方」について語ろう。


 桃乃華駅と奈落市をつなぐ国道沿いに、赤茶けた屋根の工場が建っている。赤茶けた屋根の工場が建っている。昭和期に廃業して、長年放置されているが、戦時中には軍の兵器開発がおこなわれていたらしい。


 立入禁止となっているのだが、警備員がいないので、こっそり潜り込むことは可能だ。事実、若者たちの格好かっこうの遊び場所になっている。だが、闇にまぎれて遊ぶなど、宇多方ではあってはならぬことだ。彼らの一部が神隠しにあったことは言うまでもない。


 また、廃工場なのに深夜に明かりが点いて、窓越しに大勢の人影が見えることがあるらしい。ふにゃふにゃと身体をくねらせた、やせっぽちの人影だという。尖った頭が特徴的である、彼らは人間のふりをしているが、「別界の者」であるという噂である。


 おそらく、工場の敷地内に、「別界の門」があるのだろう。


 実は、「別界」と兵器開発には、深いつながりがある。「別界」の技術力を活かした兵器が、戦時中に研究されていたのだ。信頼のできる情報筋によると、特定のエリアを跡形もなく消し去る、人為的な「神隠し」兵器だったしい。


 もっとも、研究者全員が神隠しにあってしまい、完成には至らなかったのだが。



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