第34話 タマネギ


 「宇多方」について語ろう。


 桃乃華市の安曇川河川敷には、スポーツ用グラウンドが並んでいる。すぐ隣には広大なスペースがあり、もう一面のグラウンドをつくることができるのだが、長年、空き地のままで放置されていた。


 誰かの私有地ではなく、桃乃華市の公用地である。役場が管理をおこなっており、危険を避けるために、一般人の立ち入りは禁じられている。実は、かつて「別界の門」があった、とされるからだ。


 なのに、近所の主婦グループが勝手に入り込み、自分たちの畑をつくってしまった。いくら役場の人間が注意しても、彼女たちは耳を貸さない。土が肥えているせいか、とても大きな野菜が収穫できたらしい。とりわけ、タマネギは大きくて、子供の頭部ほどもあった。


 だが、不気味な出来事をきっかけに、主婦グループは撤退して、畑は閉鎖された。収穫したタマネギの表面に、人の顔が現れたのだ。それはまるで、デスマスクのようだったという。


 主婦の中には、亡くなったしゅうとめの顔を見つけ、大きな悲鳴を上げた者もいたらしい。

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