第25話 霧のハイウェイ


「宇多方」について語ろう。


 桃乃華市の北東の一角を高速道路が横切っている。交通量は少なく、騒音問題が発生したことはない。ただ夜更けになると、濃い霧が発生することがある。


 ほぼ直線の高速道路なのだが、ほとんど視界が利かない。別界がらみでなくても、停車して様子を見た方がよいだろう。僕は、そう判断した。


 ただ、その日は、なぜか晴れる様子がなかった。すぐ横を、宅配便トラックが猛スピードで走り過ぎていった。よほど急ぎの配送なのか、命知らずのトラックドライバーのようだ。


 一時間ほどして、ようやく霧が消えた。僕は安全運転を心がけ、慎重に車を走らせ、無事帰宅を果たした。


 霧による交通事故はなかった。その代りに、とんでもないことが起こっていた。後日判明しただけで、乗用車やハイウェイバスが八台も消失したのだ。乗っていた約三〇人が、神隠しにあってしまった。その中には、僕の見た宅配便トラックも含まれていた。


 これほど大規模な神隠しは、宇多方といえども珍しい。専門家が調べたところ、霧を形成していた水分子は、別界の特徴を有していたという。

 消えた八台は、どこに消えたのか? 無事、現世に還ってこられるのか? それは誰にもわからない。


 もしかしたら、あの宅配トラックは今も、別界のハイウェイを走り続けているのかもしれない。


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